山本道子著「ベティさんの庭」(第68回 (1972年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

 以下本の内容や感想などを述べる。

 

 

 

内容

 ベティさんとはオーストラリアのマイクに嫁いだ妻のことで、元々は柚子ゆうこという日本の名前をもっていたが、結婚を機に洗礼を受けて柚子という日本の名前は捨ててしまいエリザベスになった。エリザベスは「ベティ」と呼ばれるようだ。

 ベティさんの元へは日本人が度々やってきて、特に日本の船乗りとベティさんは交流する。オーストラリアに来ている日本人の船乗りが喧嘩を起こした時には、ベティさんは自分が住む家に引き取ることにした。

 ベティさんは日本に帰りたがっていた。

 

 ベティさんの異国での生活の様子が書かれている。

 

感想

 淡々と書かれていた。ベティさんの、日本を想う気持ちであったり、夫の冷たさであったりは書かれてはいたが、事件が起きたなどというはっきりとしたものではなかったという印象だった。

 「芥川賞全集 第9巻」の年譜のところを見ると、著者の山本道子は30歳ごろ多分日本人の夫であろう、古屋と結婚し、32歳で夫の転勤のため、オーストラリアのダーウィンに移住し、その後キャンベラ、メルボルン等を転々としたとある。「ベティさんの庭」では夫はオーストリア人であったが、オースラリアに実際に行った経験を基に書いたのだろう。

 

選評

選考委員会には井上靖、大岡昇平、瀧井孝作、中村光夫、永井龍男、丹羽文雄、舟橋聖一、安岡章太郎、吉行淳之介の九委員が出席した。

 永井龍男は以下のようにいう。

 「ベティさんの庭」を推した。前作「魔法」から着実な成長があり、個性を伸ばしている点に敬服した。あれこれ眼を移さないので、作品が静かであった。 (365頁)

 

参考

今回読んだもの 山本道子、「ベティさんの庭」 (「芥川賞全集 第9巻」より)、文藝春秋、1982年