芥川賞

山田太一、「異人たちとの夏」を読む・死んだ人がでてくる話

この話の主人公は私で、シナリオライターをやっており、つい先日妻子と別れた。それで、同じマンションに住む女がやってきていい仲になる。あるとき、私は48歳の誕生日を迎え、浅草に行くと、演芸ホールで、死んだ父親に似た人物にであう。そしてついていく…

金原ひとみの「蛇にピアス」(第130回(2003年下半期)芥川賞受賞作)・刺青についての話を読む

金原ひとみの「蛇にピアス」を読んだ。主人公はルイという未成年の人で、同じく未成年の彼であるアマ、ピアスを開けたり、刺青を入れたりする店<desire>の主人、シバが主に登場する。内容はまず、ルイがアマに影響され、ピアスを舌にあけ(スプリットタンにするため)</desire>…

辺見庸著「自動起床装置」(第105回芥川賞受賞作)を読む(変わったアルバイトについての話)

「自動起床装置」(第105回(1991年上半期)芥川賞受賞作)

感想・蹴りたい背中について・後ろ姿とはなにか——綿矢りさの「蹴りたい背中」を読んで

今回読んだ本は綿矢りさの「蹴りたい背中」である。これは第130回(2003年下半期)芥川賞を受賞した作品である。 「蹴りたい背中」の内容 高一の主人公の私とにな川は周りに馴染めていない。にな川はオリチャンという女性ファッション誌に出てくる女性が好きだ…

藤野可織著「爪と目」(第149回 (2013年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

内容 人の呼び方が変わっているので読みにくいと思うが内容を紹介する。 この作品の主な人物はあなたで派遣社員である。そのあなたが眼科で、3歳であるわたしの父と出会い、わたしの家にくる。 わたしの母はいた。表向きは事故死だったがほんとうのところは…

小川洋子著「妊娠カレンダー」(第104回 (1990年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

小川洋子はきいたことのある名前ではあったが作品は読んだことがなかった。今回がはじめてである。 内容 主人公の私の姉の妊娠の様子が書かれている。 姉と義兄の関係や、妊娠中においに敏感になるということや、つわりのさい中は食欲が減っており、体重は赤…

津村記久子著「ポトスライムの舟」(第140回 (2008年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

内容 主人公は29歳、結婚はしていない、ラインの工場勤務、ほかにもパソコン講師やデータ入力の内職などをしている長瀬由紀子(フルネームは最初の方だけ出てくるが以降ナガセ)である。工場勤務のある休憩時間、ナガセはNGOが主催する世界一周のクルージング…

本谷有希子著「異類婚姻譚」(第154回 (2015年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

内容 夫婦が似たものになっていくという話。 主人公である私(サンちゃん)は前に働いていた仕事が激務で体調を崩して悩んでいたとき旦那と知り合った。旦那は「無理して働かなくても大丈夫」といってくれた。私は専業主婦という看板を出してはいるものの朝食…

庄司薫著「赤頭巾ちゃん気をつけて」(第61回 (1969年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

内容 感想 選評 参考 内容 この話の時期は東京大学の入試が中止になったころ。主人公はぼく(庄司薫)で、日比谷高校の三年生である。庄司は犬が死んでしまった勢いもあって怪我をしてしまい、病院へ行ったり足を引きずったり、その様子がこの物語全体で書かれ…

大庭みな子著「三匹の蟹」(第59回 (1968年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

第59回は丸谷才一の「年の残り」と今回紹介する「三匹の蟹」が芥川賞の受賞作である。 内容 感想 選評 参考 内容 アメリカにやってきた日本人夫婦の由梨と武がパーティーを開くことになる。けれども由梨はパーティーに来る人々を嫌悪しているところがある。 …

丸谷才一著「年の残り」(第59回 (1968年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

「芥川賞全集 第8巻」が手元にあるのでこの本に入っている作品についての感想を書いていきたい。 内容 69歳の医者の上原庸という人物が主人公。そこに高校一年生の後藤正也という人物が腹が痛いということでやって来る。上原は息子が死んでしまいおらず、ま…

田中慎弥著「共喰い」(第146回 (2011年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

これもまた最近の芥川賞を取ったものだけど読んでみた。 内容は女との行為のときに殴りつけるという癖がある父親をもつ篠垣遠馬という人物が父と同じような癖を表すのか、という事であったり、父は妻とは別居中で、他の女と暮らしているのだがどういうふうに…

長嶋有著「猛スピードで母は」(第126回 (2001年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

内容 舞台は北海道。話は雪のため、車のタイヤを母とその息子の小学生である慎が交換するところから始まる。 慎は母と二人暮らしをしており、時々祖父母の家に行く。 母が結婚するかであったり、慎の学校での様子が中心にかかれている。 感想 最近はあまり新…

髙樹のぶ子著「光抱く友よ」(第90回 (1983年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

第90回は笠原淳の「杢二の世界」と髙樹のぶ子の「光抱く友よ」が芥川賞を受賞している。以下話の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 主人公は高校に通う相馬涼子。英語教師の三島良介に惹かれていた。 ある時涼子は二階へ通じる踊り場辺りで…

笠原淳著「杢二の世界」(第90回 (1983年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 話は最初杢の兄とその嫁典子とその子で小学三年生になる息子の悟が出てくるところから始まる。ふと悟が兄に「……杢二さんかと思った」というところで、杢二の兄は杢二のことを思い出し話は進んで…

芝木好子著「青果の市」(第14回 (1941年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 主人公は八重。長女で、仲買人で、築地市場の問屋定文(さだぶん)で働いている。八重はこの仕事を好きでしている。また、未婚である。 八重の家族の事情や八重が結婚しないかという問題であったり問屋で働いている様…

三田誠広著「僕って何」(第77回 (1977年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 主人公は上京してきた僕、大学に通っている。うまくとけこめずにいる。集会に誘われたきっかけである学生運動のグループb派に入る。そこでデモをしていると僕はひとつにとけあった感じにうたれた…

池田満寿夫著「エーゲ海に捧ぐ」(第77回 (1977年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 場所はサンフランシスコ。私はスタジオにいて、他にはアニタという髪が褐色でモデルでローマで出会った女と、グロリアという二か月ほど前アニタが突然連れてきた女がいて、二人の体を見ている。 …

宮本輝著「螢川」(第78回 (1977年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 舞台は富山県。螢はいたち川で飛ぶようだ。主に出てくるのは、——竜夫、14歳。彼は幼馴染の英子に恋をしている。竜夫以外にも関根という人物が英子に恋をしている。竜夫の父重竜は52歳で竜夫がで…

石川利光著「春の草」(第25回 (1951年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 主人公は銀座の新興百貨店の会計係の中年、京口である。話は国分寺駅近くにある「亀一」という飲み屋で勤務の後、京口が飲んでいるところから始まる。 京口には大学のころ知り合った妻の睦子がおり、京口の出征中、睦…

小谷剛著「確証」(第21回 (1949年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

第21回は既に紹介した由起しげ子の「本の話」と今回紹介する「確証」が芥川賞受賞作である。以下内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 出てくる人物は主に妻がおり、婦人科医である私と流産のためその病院にやってきた水田さち子、電車に乗っ…

由起しげ子著「本の話」(第21回 (1949年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 話は最初、大学教授であった私の義兄白石淳之介が死んでしまったところから始まる。私の姉も病気だったが、義兄はその姉の看病もしていたので私の考えは義兄が重体に陥るとまでは思わなかったが、義…

三浦哲郎著「忍ぶ川」(第44回 (1960年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

三浦哲郎の『忍ぶ川』は以前「ユタと不思議な仲間たち」を読む前に新潮文庫のもので読んだ。そのときは「忍ぶ川」のほかにも作品が収録されており、ほかの作品も「忍ぶ川」とつながりがあるようで、話が混乱してきて読むのをやめた。今回は「忍ぶ川」のみを…

宮原昭夫著「誰かが触った」(第67回 (1972年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 舞台はあるハンセン病療養所の、少年少女患者のために園内に設けられた小・中学校の分教場。 主に出てくるのは二人の人物で一人は馬場と言ってここの中学校の教師をしていて、元々図工が担当だったが…

山本道子著「ベティさんの庭」(第68回 (1972年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下本の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 ベティさんとはオーストラリアのマイクに嫁いだ妻のことで、元々は柚子(ゆうこ)という日本の名前をもっていたが、結婚を機に洗礼を受けて柚子という日本の名前は捨ててしまいエリザベスになっ…

吉行理恵著「小さな貴婦人」(第85回 (1981年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

内容 猫に関しての話。主人公である私の淡いチャコールグレーの雲という猫は死んでしまったのだが、その猫に似た大きな猫のぬいぐるみが「竜太」という小さな店に置いてある。「竜太」の主は志野といって、母が猫を飼っていたようでそれも主人公の私と同じチ…

尾辻克彦著「父が消えた」(第84回 (1980年下半期) 芥川賞受賞作)を読む 

尾辻克彦は赤瀬川原平のペンネームである。 以下本の内容や感想などを述べる。 内容 感想 印象に残ったところ 選評 参考 内容 八王子霊園という都営墓地の調査と見物のために主人公である私が『生活』という雑誌の編集部にいる馬場君と同行して三鷹から電車…

北杜夫著「夜と霧の隅で」(第43回 (1960年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 場所はドイツ。ユダヤ人や政治犯が消え失せるという「夜と霧」命令というものがあったようで、それを交えて主に精神病院の様子がかかれる。 精神病院に入ってきたのは高島という日本人の男で、この男の彼女の父親がユ…

重兼芳子著「やまあいの煙」(第81回 (1979年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

以下話の内容や感想などを述べる。 内容 感想 選評 参考 内容 主に二人の人物が出てくる。一人はこの話の主人公と言えるだろう、敏夫で、彼の仕事は死体を焼くことであり、父の仕事を引き継いだ。もう一人は正子で、ある県には老人専門病院ができて寝たきり…

高橋揆一郎著「伸予」(第79回 (1978年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

この前紹介した高橋三千綱の「九月の空」もそうであったが、「伸予」もまた第79回の芥川賞受賞作である。本の内容や感想などを述べる。 内容 感想 印象に残ったところ 選評 参考 内容 二人の人物がメインに出てくる。一人は伸予、49歳で、後家、また、息子が…