ランボーについて

 ランボーの詩はしばしば寺山修司や三島由紀夫が引用しており気になっていた。今回は新潮文庫から出ている『ランボー詩集』(堀口大學訳)で印象にのこったところを紹介する。理解したわけではない。二つ。

 一つめは「わが放浪」という詩の一番最後の箇所。

[...]奇怪な影にとりまかれ、僕は作詞にふけっていた、ボロ靴のゴム紐を竪琴の絃に見立てて弾きながら、片足はしっかりと胸に抱えて! (p.70)

 もう一つは「地獄の一季」というもののなかの「最高の塔の歌」というところの途中。

[...]食いたいものはあるにはあるが土だの石が食いたいのだ。毎朝、僕が食うものは空気だ、岩だ、鉄、石炭だ。[...] (p.135)

 

 ひとつめは作詞で琴(ボロ靴)をもっている、という表現がいいと思った、片足はしっかりともって。

 ふたつめはなぜ石や土を食べるのか、気になった。

 

  寺山修司の『さかさま世界史 怪物伝』という本には、ランボーについて取り上げた章がある。そこでは寺山は、実際は居もしなかった登場人物を出している。そして、ランボーについて書くとなると、ウソをついてみたくなるという。以下、その部分とその後の引用。

実は木島兄弟の話は、うそである。私は玉突屋の二階に住んだこともなければ、男同士の夫婦を見たこともなかった。だが、ランボーについて書くとなると、なぜかこうしたうその一つぐらいはついてみたくなるのである。ランボー、それは私の逢ったことのない友人の一人であった。私はこの名を口ずさんでいるだけで、何となく心がかきたてられる。ランボー! どうぞ音読してもらいたい。 ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! ランボー! (p.225)

 

参考

ランボー著・堀口大學訳、『ランボー詩集』、新潮文庫、2014年(90刷)

寺山修司、『さかさま世界史 怪物伝』、角川文庫、1980年(11版)