山田太一編「寺山修司からの手紙」を読む

 この本はともに1954年(昭和29年)に早稲田大学の教育学部国語国文学科に入った寺山修司と山田太一の手紙を収めたものである。時期はおもに昭和30年(1955年)から昭和33年(1958年)。寺山修司の入院中の期間の手紙もある。

 手紙が写真付きで載っているところもあり、この本ではじめて寺山修司の字を見た。丸まるした文字を書く人だと思った。手紙には文字だけでなくイラストも載っていて楽しそうだった。気づいたのは「魚」という文字の下の「灬」というところが「大」になっていたということだ。なにか意味が込められていそうだ。

 感想として、いろいろな人物が手紙に出てくる、ということを思った。マルクス、モンテルラン、リチャード・ライト、ジョン・フォード、ぺレス・プラド、木下恵介、井伏鱒二、二葉亭四迷、マチス……。どういう本を読んだか、など二人で手紙に書き、報告していた。

 あと、本の後ろの方には寺山修司の『われに五月を』という本にあるものが載っていて、そこでは寺山修司が三島由紀夫の本からの引用をしていた。あまり寺山修司が三島由紀夫を引用するイメージがなかったので意外だった。 (調べると寺山修司の『思想への望郷』という本に三島由紀夫と対談しているのがあるようだ。)

 なんとなく気になったのは黒田維理の詩がおもしろい、と寺山修司が言っているところだった。黒田維理という名前ははじめて聞いたし、なにがよかったかは説明できないのだが。「黒  黒い馬のオペラ 黒い自動車の中の黒ん坊美人 流行鞄の中の黒い表紙の本 黒い男 (流行色)より」(「寺山修司からの手紙」、p.44)

 

 

 

読んだもの

山田太一編、「寺山修司からの手紙」、岩波書店、2015年