ブコウスキーの"Factotum"を読んだ

・内容

書かれている時代は第二次世界大戦の際中、また、終わりである。Post Officeと同じ名前である主人公のヘンリー・チナスキーは精神科医に向いていないということを言われたこともあり、兵役にはつかないでいる。そして本の題名のFactotum、「雑用係」という通り様々な仕事を転々としている、本当はライターになりたく、雑誌社に自分の書いた小説を送ったのだが、なれず、自働車部品の倉庫や照明器具の会社で働いたり、清掃員、美術品供給店の積み荷係などをしていた。舞台は主にルイジアナ州のニューオーリンズ 、カリフォルニア州のロサンゼルス、フロリダ州のマイアミであった。

 

 

・感想、面白かったところ

カリフォルニア州で仕事を探し回るという点で前に読んだエリック・ホッファーの自伝を思い出した。カリフォルニア州のスキッド・ロウなど、エリック・ホッファーの本に出てきた場所もこの本に出てきた。二日酔いや仕事に遅れる、たくさんの女との交わり、生活などのことは前に読んだPost Officeとも似ていると思った。けれども、違いは、FactotumPost Officeに比べて、郵便局を中心に書いているわけではなく、やる仕事が広範囲にわたり、出てくる女も多かったように感じた。就く仕事が多いという事はしてもすぐに仕事をやめてしまうということのわけだが、そして勤務態度も良くないのだが、何度も就職が繰り返されていても、ユーモアも混じっており、「またか」と思っても、どんなふうに次はやめるのかということを期待するところもあり、飽きることはなかった。

 

お酒はよく出てきたという印象があった。それはブコウスキーのインタビューの動画でもそうだった。ブコウスキーはよくお酒という言葉を口にしていた。

この本では二日酔いをするのもそうだが、ドライバーの見ていない隙を確認してお酒を飲む、お金はどんどんなくなって家賃支払いが滞っていてもお酒のボトルはあるといったことがでてきた。こういうのもあった、引用する。

 

  “Do you have a cigarette?”

  “Now you’ve been jailed. A thing like this could kill your mother.”

  We passed some cheap bars on lower Broadway.

  “Let’s go in and catch a drink.”

  “What? You mean you’d dare drink right after getting out of jail for intoxication?”

  "That’s when you need a drink the most.”

  “Don’t you ever tell your mother you wanted a drink after getting out of jail,” he warned me. 

(p.33,34)

 

 

ここはチナスキーが公共で酔っぱらった、交通妨害をしたということで刑務所に捕まり父親が保釈金を支払い、チナスキーが刑務所から出てきた後のシーンである。チナスキーは「タバコやお酒がほしい」、父親は「酒を飲んで刑務所に捕まってすぐにそんなことを言うのか」、チナスキーは「刑務所から出てきたときに一番酒を飲みたくなるのだ」、父親は「そういうことは母親には言わないで」というようなことを言っている。

たしかに父親の言う通り、お酒を飲んで捕まって刑務所から出てきてすぐにお酒を飲みたいというのはどうなのかと思った。そういうふうに思うかもしれないけど。

 

 

 

こういう表現があって面白いなと思った。

 

  I was assigned to the loading dock. That loading dock had style: for each truck that came in there were ten guys to unload it when it only took two at the most. I wore my best clothes. I never touched anything.

  We unloaded (they unloaded) everything that came into the hotel and most of it was foodstuffs.

(p.191, 192)

 

ここではトラックから来た荷物を10人ほどで、荷降ろすのだけど、チナスキ―はその荷物にふれようとしない。そのあとのかっこ書きで書いてあるところはチナスキ―がそれに参加していないから、そう(they unloaded)書いたのだと思うけど、かっこの前のwe unloadedと書くことによって、「ああ、この人さぼってるんだな」ということを読者により意識づける効果があるような気がした。

10人もいたら1人くらいそういう、仕事をやらない人がいるということはわかる。

 

 

 

・競馬のオッズについて

競馬についてはPost Officeにも出てきたのだが、わからなくて飛ばしてしまった部分もあった。今回も少しだが出てきて、今回は飛ばしたらまずいと思い、少し調べた。オッズというものは少しだけだがわかったような気がするので記す。自分は競馬のゲームはやったことはあっても、そのレースの賭け方は全然わからなくて興味を持てなかった。また、賭けをしたことがないので、違うかもしれないし、できていてもすごい手間をかけることを書いてしまうかもしれない。

 

例えばFactotumでは競馬のところでこういう表現が出てくる。'We were only getting 9 to 5 and I figured we couldn't win two days running, so I just bet $5.'

(p.107)

これは前の日も勝ったため、二日連続で勝てないだろうと思い5ドルのみ賭けた、その賭けた馬の対象は9-5、または口語で9 to 5であったということが書いてあるのだと思う。9-5とは何かというとこれは$5ごと賭けると$9もらえること、また、人気を示す。9-5は倍率にすると2,8倍とすることができる。倍率は低い程人気があるという意味で、高くなればなるほど人気がないということを表す。けれども人気がなければないほど、もらえる額も多くなる。これは結果の数字が書いていなかったけど、もし曖昧であるけど「勝った」なら2,8×$5で$14もらえるということを意味するのだと思う。

 

9-5、または9 to 5がなぜ2,8倍になるのか、また、2,8倍×$5=$14についてだが、もう少し書く。

 TVGというアメリカの馬の賭けやネットワークなどをしている会社のサイトでわかるところのみいくつか参考にしたのだが、こう書いてあった。文を二つ引用する。

When odds are shown in the traditional fractions, i.e. 4-1 or 9-2, it shows the amount of profit there is to be gained versus the stake.  So if you bet a horse at 4-1 for $5 and it wins, you will return $25 ($5 x 4 + original stake).

 

...so if your horse goes off at 4-5 this is basically 0.8 to 1 which is a negative, but you would still return your stake too.  So a winning $50 bet at 4-5 would return a total of $90, giving you a profit of $40.

 

一つ目の9-2や4-1というのは右側でいくらごと賭けると左側でいくらもらえるのかということが書いてある。例えば4-1だったら、$1ごと賭けると$4もらえるということが書いてある。ここでは$5賭けているので、勝つと、賭けた$5ともらえる$4をかけ、そしてプラスもともとの$5をもらうと$25になる。

 

二つ目では、4-5とある。これは一つ目の引用であった4-1のように、4-5を右側の数字5が1となるように4を5で割る必要がある、多分そちらの方が計算しやすいからそうするのだろう。4÷5すると、0.8(to 1)になる。0,8だったら、1よりマイナスなのだが、それでも元のお金を足すと利益になるということが書かれているのではないかと思う、一つ目と同じようにまず0,8と$50をかけると$40ともともとの$50よりマイナスになってしまうのだけれども、勝つと、その$40にもともとの$50を足して合計$90もらえる。

 

 

それと、9-5がなぜ、2,8倍になるのかということだが、これは9と5を足して14になり、それを右側の数字の5で割ると、2,8になるからだ。また、勝つとこの倍率に賭けた金額$5をかけ、$14になる。

TVGの引用一つ目ではそれにしたがうと、例えば4-1だと4と1を足して5になり、それを1で割ると5になる。つまり5倍だ。勝つと、それを賭ける$5でかけると$25になる。

TVGの引用二つ目では、4-5とあるので、4と5を足して9となり、それを5で割ると1,8になる。つまり1,8倍だ。勝つと、それを賭ける$50でかけると$90になる。

 

まとめると、勝った場合、何$もらえるのかというのは、例えばTVGの引用一つ目の4-1のとき$5賭けるときでいうと、ここではいずれにせよ$25もらえるわけだが、

①4-1に$5賭けているので、賭けた$5ともらえる左側の4をかけ、そしてプラスもともとの$5をもらうと$25になる

②倍率に直してそれを賭ける$5でかける、つまり4-1は4+1で5でそれを1で割り5となり、この5が倍率で、それと賭けた$5をかけると$25になる

という二つの計算の仕方があった。もっとあるのかもしれない。

 


色々競馬のサイトを見てみるとTrifecta(3連単(1・2・3着に入る馬を順番通り当てること))、Place(2着までに入る1頭を当てること)、Show(複勝(3着までに入る1頭を当てること))、Pick3(指定された3レースの1着を当てること)など知らない用語が出てきた。難しそうだ。多分計算方法も違ってくるのかもしれない、また、勝ちとは何かは変わってくるのだろう。

でもブコウスキーのこの本ではそこまで詳しく出ているわけではなかった。今回は出てきたのを飛ばすのはどうかと思って、一応、少しなのだろうが調べた。詳しい方がいたら教えてほしい。また、間違いもあれば教えてほしい。今回はそこまで詳しく出てきたわけではないので詳しくは調べなかったが、もし、違う本で出てきたり、実際に競馬の賭けをやる機会があればそのつど書いていきたい。

 

 

・読んだもの

Factotum: A Novel (English Edition)

Factotum: A Novel (English Edition)

 

 ※ペーパーバック版を買った。