ブコウスキーの『郵便局』を読んだ

・本書とブコウスキーと郵便局について(ウィキを参照した)

 チャールズ・ブコウスキー(1920-1994)はロサンゼルスの郵便局(USPS)で働いていた。1952年から3年程、代理の郵便集配人として働き辞め、その後1958年にまた戻り1969年まで郵便物の分類などをしていた。

1969年の12月にジョン・マーティンはブコウスキーの作品を出版するためにBlack Sparrow Pressという出版社を創設し、ブコウスキーに「郵便局の仕事を辞めBlack Sparrow Press社のために月に100ドルで働くのはどうか」という申し出をした。ブコウスキーはそれを受け入れた。郵便局を辞めてから一か月足らずでブコウスキーは最初の小説『郵便局』を書いた。『郵便局』の出版年は1971年である。

 

cf. 読んだことがないが『パルプ』というブコウスキーの小説とBlack Sparrow Pressやその出版社の創設者であるジョン・マーティンは関係があるようだ。

 

 

・内容と感想

 主人公の名前はHenry Chinaskiという。郵便局の仕事の大変さが書かれた本であった。配達をやっているときは名前を間違えられることもあるし雨が降って服だけでなく荷物が濡れることもあるし犬がついてくることもある。どの地区がきついか、どんな住人がいるのかということも書かれていた。ほかには郵便局の勤務の体制や休憩時間、働いている人などについてだ。主人公はお酒をよく飲んでいて二日酔いで仕事をしていることもあった。女が好きでよく登場してきた。

競馬のシーンがあった。そこは勝ち負け以外全然読み取れなかった。賭けについての言葉が苦手なのだろう。何とかしたい。

  

 手を差し出している人というのがいて何なんだろうと思った。その人は荷物の箱に荷物を入れることをさせない。その人が外に居てChinaskiが箱の穴に荷物を半分入れたのを見て入れては駄目だということを叫びChinaskiに向かって走ってきてその人に手渡しすることになったという場面があった。直に荷物を受け取らないと安心しないのだろうか。または手でもらうことにより温もりを感じるのか。箱に入っていると盗まれると思っているのか。答えは書いてなかったがそういう人もいるのだなと思った。面白かった。

 

 

・印象に残ったところ

 George Greeneという20代の始めからずっと60歳後半の今まで郵便配達人として働いている人がいた。その人は高級な住宅地の担当をしていて、Georgeは笛を吹いて子供たちを呼びキャンディーをあげることにしていた。けれどもある日新しく来た女の子にキャンディーをあげるとその子の母親に変な人と思われて訴えられてしまった。

 その後はGeorgeは落ち込んでいて、よろめき口ごもり、泣き、周りの郵便配達人はかつてはGeorgeをいいやつだと言っていたのにGeorgeが落ち込んでいてもChinaski以外誰も気にかけなかった。お菓子を子供たちにあげるということは変な人と思われる可能性があるなと思ったが、長年働いていて評判も悪くなかった人が失敗をして落ち込んでいるのに主人公以外が気にかけないということや落ち込みながら仕事をしている様子に切なさを感じた。

こういう表現があった。

'(...)But each time he faltered, something tugged at me. It was like a faithful horse who just couldn't go anymore. Or an old car, just giving it up one morning.'(p.32)

「(…)しかしGeorgeがいつも元気をなくし私(Chinaski)に何か感じさせるものがあった。その様子は忠実な馬がただもう歩けない、またはある朝古い車のエンジンをかけても動かないようであった。」(自分の訳)

 

そんな感じがした。

 

 

・出てきた単語 

以下はこの本に出てきた単語である。少し分類した。

〈郵便局特有の単語〉 

pickup 収集、 slip 伝票、 registered letter 書留郵便物、 scrawl 走り書きする、 dispatch 発送する、 circularまたはcircs ちらし、 lading 荷積み、 swing 行き来する

〈仕事に関する単語〉

days off 休み、 call in sick  病欠の電話をする、 be absent without leave 無断欠席する、 behind schedule 予定に遅れて、 save a trip 手間を省く、 punch out 出社または退社の時刻をタイムレコーダーに記録する、 timers 勤務時間記録係、 negligence 怠慢・不注意、 mimeo ニュースレター・社内報

〈駄目な人を表す単語〉

oaf でくのぼう、 bastard ろくでなし、 cocksucker ばかたれ

〈その他〉

boulevard 広い並木街路

small town 保守的な、あかぬけない

longhand 手書き

envision 想像する

ditto 同上

alimony 別居手当

brace oneself from A  Aを覚悟する

 

 

・読んだもの

Post Office

Post Office