ルーマー・ゴッデンの「黒水仙」(Black Narcissus)について

 中心となる舞台はインドのヒマラヤのそばの尼寺であり、そこは学校や病院をつくるためシスター(修道女)が必要だった。修道院の長から選ばれ、馬で尼寺へ向かう。シスターはひとりではなく、複数いる。ークローダ(Sister Clodagh)、ブリオニー(Sister Briony)、ハニー(Sister Honey)、フィリッパ(Sister Philippa)、ルース(Sister Ruth)。

 ほかの登場人物は迷惑をかける、若くてかわいらしい17歳のカンチ(Kanchi)や将軍の跡継ぎなど。

 その尼寺でシスターを将校の代理人ディーン(Mr Dean)が迎える。学校や薬局の建物などは着々と造っていく。そしてクリスマス、春の訪れ、イースター、受難節など、それぞれの季節に応じて出来事が起こる。

 様々な問題も起こる。それはカンチがものを盗んだり、ルースとディーンの恋愛の問題であったり、死にそうな子供連れの母親が来て、ハニーがその子供のために薬をあげたのだが結果死んでしまったり。だんだんと、修道士たちは村人から疎まれ、子供は学校に来なくなり、状況は悪くなっていき、修道士たちは追い込まれていく。

 

 

 

 とくに診療についてのことはよく出てきたため頭に残った。クリニックは建てるべきか、助けようのない患者へどう対応すればいいのか、など。先ほども書いたがハニーが、診療所に訪れた子のために薬をあげた結果死んでしまう。以下の文は残酷さを感じた。代理人のディーンがこういうことが前にあったと言っている場面で、決して故意ではなく、事故であっても、それは深刻なことであるということをあらわしている。引用する。(訳はkankeijowbone)

'The Agent here before my day was riding his pony down to the factory one day and he let it kick an umbrella that was open on the path, over the edge. There was a baby asleep under it and it was killed. It was an accident but they murdered him that night.’ (p.177)

「ここの私の前の代理人はある日、工場まで小馬に乗っており、道に開いた傘を見かけたため正気を失って蹴った。赤ん坊が傘の下で眠っており死んだ。それは事故であったが村人はその夜、前の代理人を殺した。」

 

 題名の「黒水仙」(Black Narcissus)は20章で将校の跡継ぎが軍や海軍の店で購入し、つけている香水の名前である。その匂いは強烈でシスターにめまいをおこさせるほどのものだった。ウィキを見るとキャロン(caron)というブランドの水仙の香水を指すようだ。込められた意味はあったのか、どういう意味でこのタイトルにしたかは気になった。

 

 鐘の音が、夕を告げる、朝を告げる、重要な人が来たときに鳴らすなど書いてあった。鐘の音の種類は時間帯などによって違うのだろうか。鐘の音は自分は教会を通ったとき、きいたことがあるのだが、音が大きくて一帯に響き渡り荘厳な感じがした。また聞いてみたい気もする。

 

 

 1947年に公開された映画もある。


BLACK NARCISSUS - Trailer - (1947) - HQ

 

 

語句

reverend 尊敬すべき

stick to one's guns 自分の立場を固守する

hopscotch 石蹴り遊び、けんけんぱ

ringworm 白癬(皮膚感染症のひとつ)

pantheism 汎神論

anklet 足首の飾り

boisterous 大荒れの、荒れ狂う

invulnerable 不死身の

plait 編み下げ、おさげ

deodar ヒマラヤスギ

peon (中南米で)労働者

 

 

読んだもの

Rumer Godden, Black Narcissus, London/Basingstoke: Pan Books, 1994