菊池寛著「屋上の狂人」を読む・屋上のイメージ

 今回はまず、読んだ「屋上の狂人」についてあらすじや感想を書き、次に劇団ひとりの「304号室青木」について書く、そのあとに星新一の作品を参考にしながら、屋上のイメージについて述べる。

 

菊池寛著「屋上の狂人」について

あらすじ

屋上によく上る勝島義太郎(24歳。この話では狂人)は、屋上から海の上を凝視している。家族はよく思っておらず、その父、義助は恥になるから降りてくるように頼む。が、降りてこず、巫女を呼ぶことに。しかし、巫女を呼ぶことを義太郎の弟(17歳)はよくおもっておらず、兄をそのままにしておいてもいいのではないかと思い…

 

感想

 この話でもあるように、狂人、あるいは変な人、というのは、どのくらい他に迷惑を及ぼすのか、ということにもよるが、放っておいた方がいいのではないか、と思うこともある。そのほうが、相手の為にもなるだろうし、そもそもの問題として、相手は自分のいうことをきいてくれるのだろうか、…きいてくれるまでに時間がかかりそうだ…。

 この話では、屋上によく上っている、という義太郎が狂人とされていた。しかし、家族にとってはそれは恥であり…。たしかに自分の家の屋上にいつも人がいたら嫌だ。しかし、その程度の狂人であれば、弟のように、放っておいてもいいのではないか、と思うこともある気がする。

 

劇団ひとりの「304号室 青木」について

 「屋上の狂人」を読んで思い出したのが、劇団ひとりの「304号室 青木」というネタである。

 このネタは、屋上で、青木という将来マジシャンになりたい人物がマジックのようなものをしている。「ふんわか、ふんわかー」というbgmが流れながら、劇団ひとりはお腹からフラッグを出したり、<死>と書いた紙を取り出し破ったり、<生>と書いた紙を取り出したりしている。これを狂人と呼べるのか、というのはいろいろ言えるのだろうが、ふつうである、とは思わない。自分は狂人と呼べるのではないか、というふうにおもう。

 どこか苦しそうで、面白い、というふうには思わない。が、なぜが、たまに見てみたくなる、というときがあり、時々見返す。

 

屋上のイメージ(星新一の作品を参考としながら)

 前の章に書いた菊池寛の「屋上の狂人」および、劇団ひとりの「304号室 青木」では、どちらも屋上に狂人とよべるような人物が登場した。屋上は狂人が集まりやすい舞台なのか。ここでは自分が前、よく読んでいた星新一の話を参考に、屋上のイメージについて書いていく。

 まず、屋上と言われて星新一の作品で思いつくのは、「一日の仕事」という話である。この話は仕事以外やることがない、というもので、冷凍食品を持って屋上に行くのであるが、周りを眺めても他には誰もいない。屋上というものは見渡しがいい、こういった、誰かいるのか、ということを確認する、と言った場面に屋上というのは出てくる。次は「死の舞台」という話。これはホテルの屋上で女が自殺を考えており、多くの人の注目を集めるのだがその隙に…という内容である。屋上というものは自殺の場面にもなりうる。そして、それは注目を集めがちである。が、この話であるように、油断のすきも生まれる。それから、「拳銃の感触」という話。これは、ビルで強盗をした犯人は強盗をした場所で行員にベルを押され、パトカーが外には居るため、逃げられず、うろついたあげく屋上に逃げ、警察に追い込まれる、というのが大体の話の筋である。この話のように、屋上というものは、高さがあるが逃げられない、落ちるしかない、という追い込まれた状況にも使われる。

 三つ、星新一の作品を挙げてきて、屋上が悪い場面で使われることがある、ということを見てきた。マンガやドラマ、ニュースなどの話でも、屋上は悪いとされる場面で使われたり、似たような緊迫した状況のなかで使われることはある。そういった意味では、屋上というのはなかなかふつうではない。狂人という人物が出てくるのかはわからないが、どこかおかしな、狂った場所として屋上というのは使われるのではないだろうか。

 

 しかし実際はどうなのか、実際にそのような悪いとされる出来事を屋上で体験したことがあるのか、といわれると、したことがない。

 自分がふつう、屋上のイメージ、といわれておもいだすのは何かというと、それはもっと楽しいものや娯楽的なものである。例えば、屋上庭園、屋上の展示、屋上のフェスティバル、屋上プール、屋上コート……などがある。

 

まとめ

 今回は最初に、菊池寛の屋上で狂人が出てくる「屋上の狂人」という話のあらすじや感想を書いていった。次に、これもまた、狂人と呼べるような人物が出てくる劇団ひとりの「304号室 青木」を見ていった。そのあとは、屋上のイメージについて書いていった、星新一の作品のなかには、屋上が悪い場面に使われることもあった。そういった意味では屋上というのは、おかしな場所として使われるのではないか。しかし、実際にはどうか、というと、屋上のイメージはもっと娯楽的なものである、ということを書いていった。

 

 高さを利用した話についてもまた、書いていきたい。

 

参考としたもの

・菊池寛、「屋上の狂人」、新潮文庫、1960年

・劇団ひとり、「304号室 青木」、YouTubeより

・星新一、「一日の仕事」(『だれかさんの悪夢』に収録されている)、新潮文庫、1981年

・星新一、「死の舞台」(『おせっかいな神々』に収録されている)、新潮文庫、1979年

・星新一、「拳銃の感触」(『ひとにぎりの未来』に収録されている)、新潮文庫、1980年