桃尻関係

桃尻と書いてもじります。哲学、地名、本の感想などを中心に書いていきます。

(読んだなかで)芥川賞をとった好きな作品10こ

 今日は芥川賞の発表だった。第161回の芥川賞は、今村夏子がとったようだ。作品を読んだことは無いが、面白そうだ。

 

 いままで芥川賞を取った作家は170人ほど、作品は複数が芥川賞をとるということもあるため、175くらいは全部である。

 芥川賞をとったものは三分の一ほど読んだ(60作品ほど)。読んだたびに、感想などの記事は書いていたが、好きな作品は言っていなかった。今回は芥川賞をとった中から、とくに好きな作品を紹介したい。10こ選んだ。

 

1. 石川利光、「春の草」、1951年上半期(第25回) 

※『芥川賞全集 第四巻』に収録されている。

 

  これは安部公房の「壁」と共に受賞した作品である。

 主人公が復員した後、東京に来た様子が自然な感じで書かれている。京王沿線の駅近くの飲み屋について、淡々と書かれているところがある。文に気どったところがない。

 

2. 庄野潤三、「プールサイド小景」、1954年下半期(第32回)

 

プールサイド小景・静物 (新潮文庫)

プールサイド小景・静物 (新潮文庫)

 

※『芥川賞全集 第五巻』に収録されている。 

 

 ある家族がプールサイドにいる。けれども、その家族には実は事情が様々あって…そんなことが書かれている。

 妻から見て夫は全然仕事につらさを感じているように見えないが、実は仕事でつらさを感じていた。どうやってそのつらさを夫が感じ取ったか、というところの表しかたというのが印象的だ。

 

3. 安岡章太郎、「陰気な愉しみ」、1953年上半期(第29回) 

 

ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫)

ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫)

 

 ※『芥川賞全集 第五巻』に収録されている。

 

  主人公の私は、神奈川県にある県庁所在地である横浜の役所に、金をもらいに行く、というところから始まる。主人公はそこにいる少女がいないでほしいと思い、ある日、幸運なことにいなかったのだが…

 主人公にどこか冗談(いたずら)好きなところが書いてあり、独特な話だと思う。

 

4. 吉行淳之介、「驟雨」、1954年上半期(第31回) 

 

原色の街・驟雨 (新潮文庫)

原色の街・驟雨 (新潮文庫)

 

※『芥川賞全集 第五巻』に収録されている。 

 

 多数の相手をしなければならない職業の人は、ひとりの人を愛すのか、ということについてかかれている。

 「驟雨」とは「にわか雨」のこと(goo国語辞典)であるが、にわか雨以外にもそれと似たような風景があって…

 

5. 河野多恵子、「蟹」、1963年上半期(第49回) 

 

P+D BOOKS 幼児狩り・蟹

P+D BOOKS 幼児狩り・蟹

 

 ※『芥川賞全集 第六巻』に収録されている。 

 主人公は外房州の転地療養に来たのに蟹を探すというのが面白かった。そして、それにはかなり熱中する、どうしても手に入れたい。その様子がよかった。

 

6. 綿矢りさ、「蹴りたい背中」、2003年下半期(第130回)

 

蹴りたい背中 (河出文庫)

蹴りたい背中 (河出文庫)

 

 

 主人公は高校生、気になる男がいたが、あるファッション誌に出ている人に熱中しており、なかなか振り向いてもらえず…。「蹴りたい」というタイトルのインパクトが強く、惹きつけられた。

 

 

7. 小島信夫、「アメリカン・スクール」、1954年下半期(第32回)

 

アメリカン・スクール (新潮文庫)

アメリカン・スクール (新潮文庫)

 

 ※『芥川賞全集 第五巻』に収録されている。 

 

 ある県にはアメリカン・スクールがあって、そこに行くまでと行った後の様子がかかれている。英語を「小川の囁きのような清潔な美しい言葉の流れ」、と表現しているなど、表現の仕方にいろいろと面白い箇所がある。学校に行くときのシーンは長めで、そこも見ごたえがあった。

 

8. 柴田翔、「されど われらが日々——」、1964年上半期(第51回)

 

新装版 されどわれらが日々 (文春文庫)

新装版 されどわれらが日々 (文春文庫)

 

 ※『芥川賞全集 第七巻』に収録されている。

 

たまたま古本屋で見つけた本の前の所有者が実は…

そこから、その所有者を知ること、そして、知った後、どうするのか、ということが面白かった。

 

9. 中里恒子、「日光室」、1938年下半期(第8回)

※『芥川賞全集 第二巻』に収録されている。

 

題名のつけ方が面白い、もう一つの芥川賞をとった「乗合馬車」とともに。

扱っている問題は今でいうハーフについて。古いとは思わない。

 

10. 尾辻克彦、「父が消えた」、1980年下半期(第84回)

 

父が消えた (河出文庫)

父が消えた (河出文庫)

 

  ※『芥川賞全集 第十二巻』に収録されている。

 

 尾辻克彦はトマソンで知られる赤瀬川源平のペンネームである。

 東京発の電車に乗り、八王子の墓地まで行く。墓に行くという設定が面白かった。

電車の「行き」・「発」に注目するなど、独特だと思った。

 

 

※古い芥川賞作品は文藝春秋の「芥川賞全集」で読んだ。今回は紹介するため、表紙が映えるように文庫本の表紙をAmazonで貼った。

 

<おわりに>

 以上、好きな作品を10こ選んだ。『芥川賞全集 第五巻』に載っている作品が多かった。ある程度読んだら、また、紹介したい。

   作品について以下自分が書いたものではあるが読んだ記録を載せた。今回紹介したよりは詳しい。しかし、内容も大分書いてしまったため、それがいやであれば読まないほうがいいのかもしれない。

 

1. 石川利光著「春の草」(第25回 (1951年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

2. 庄野潤三著「プールサイド小景」(第32回 (1954年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

3. 安岡章太郎著「陰気な愉しみ」(第29回 (1953年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

4. 吉行淳之介著「驟雨」(第31回 (1954年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

5. 河野多恵子著「蟹」(第49回 (1963年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

6. 感想・蹴りたい背中はないか・後ろ姿とはなにか——綿矢りさの小説を読んで

7. 小島信夫著「アメリカン・スクール」(第32回 (1954年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

8. 柴田翔著「されど われらが日々——」(第51回 (1964年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

9. 中里恒子著「日光室」(第8回 (1938年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

10. 尾辻克彦著「父が消えた」(第84回 (1980年下半期) 芥川賞受賞作)を読む