星新一の好きな作品10選

 新潮社に『星新一ショートショート 1001』というものがある。これは全三冊にわたって、星新一のショートショートの文庫本39冊分の短編が載っている本である。自分は、この新潮社の全三冊の本は図書館で借りて確認した程度だが、文庫本は結構買い集めていて、39冊分のうち、30冊以上は買った。その30冊以上の内、全部は読んだわけではないが、7、8割くらいは読んだと思う。今回はそのなかから、特に好きな作品を紹介したい。

 

1.「末路」 (『さまざまな迷路』に収録)

 これは様々なことをある番組で批判し続けた人物がどのような末路を迎えるのか、ということが書いてある作品である。

 実際、そのようなテレビタレントは思い浮かぶような…テレビではよく批判しているが、テレビ外ではどんな目に遭っているのだろうか、そんなふうに思う。

 

さまざまな迷路

さまざまな迷路

 

 

 

2.「約束」 (『ボッコちゃん』に収録)

 ある飛行物体が子供たちの前にやってきて、何か約束を叶えてくれるという。しかしその飛行物体は仕事があるということでいったん帰る。再び飛行物体が約束を果たそうとやってきたが、子供たちは大きくなっており、もうその約束は必要としていなかった。

 子供だったら望むことだが大人になるとそのことを望まないということがうまくかいてあると思った。

 

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

 

 

 

3.「宝島」 (『ちぐはぐな部品』に収録)

 二人は海に行くと、瓶の中にある地図が入っていることを発見した。その地図に描かれていた島に行ったが、そこでもまた他の地図があり……なぜこんな地図があるのか…どのような結末になるのだろうか。

   宝島のような夢のあるところに行きたいとはだいだいの人が思う。しかし、その欲求の強さが、危険だということもある、ということがわかる作品だと思う。

 

ちぐはぐな部品 (角川文庫)

ちぐはぐな部品 (角川文庫)

 

 

 

4.「成熟」 (『ひとにぎりの未来』に収録)

 強盗をした三人組がおり、小屋に隠れる、そして一人は小屋の外で警察などの動きを確認するため見張りをしていなくてはならない。代わる代わる、ひとり三十分、外を見張ることにする。一人が外で見張っているあいだ、中に居る他の二人は強盗したお金の取り分を増やすため外にいる一人を裏切ろうとする。時間がやってきて、見張りを交代し、そして次は違う外にいる見張りを裏切ようとし、それが繰り返され…その先にはなにが待っているのだろうか…。

 これは日常でもよく起こることだと思う。居合わせた人は協力しようとする態度をとる、が、いなくなった瞬間、陰口を言いはじめる。——自分がいないときにどんなことを言われている可能性があるか、ということがわかる作品だと思う。

 

ひとにぎりの未来 (新潮文庫)

ひとにぎりの未来 (新潮文庫)

 

 

 

5.「お地蔵様のくれたクマ」 (『悪魔のいる天国』に収録)

 これは怖いといえば怖いのだろう。ある坊やがいて、バグの夢を見る。しかし、そのバグが夢のなかでどのように変わっていくのか、ということが書いてある。それは夢のなかではなく、現実にいる意地悪い子供が関係しているのだが…。ぞっとする話である。

 夢の中と、現実のかかわりを書いた、そこにバグの通常考えられる性質をもってきてうまく生かしている、というのが面白いと思った。

 

悪魔のいる天国 (新潮文庫)

悪魔のいる天国 (新潮文庫)

 

 

 

6.「サービス」 (『おせっかいな神々』に収録)

 ある電球売りのセールスマンがいて、電球以外にも「サービス、サービス」といって、いろいろと付け加えてくれるが、実はそれには狙いがあって…そのセールスマンは昇進するのだが、もう一方のセールスマンは(なんであんなにサービスしているのにこんな昇進するんだろう?)と思う。オチの付け方も非常に面白いと思う、壮大な感じがする。

 「サービス」という語は、サービスされる側だけではなく、する側にも何か意図がある、ということはたしかにそうだと思う。もうすこし、「サービス」という語に隠れている部分をこの作品を読んで、考えようと思った。

 

おせっかいな神々 (新潮文庫)

おせっかいな神々 (新潮文庫)

 

 

 

7.「凍った時間」 (『ちぐはぐな部品』に収録)

 ムントという、人に喜ばれることをしたいサイボーグはいつも地下室にいて、テレビを見ることだけが生きがいなのだが突然テレビが真っ白になったため出てみると人々は倒れていた…なにがあったのだろうか……気になってひさしぶりに外出し、ムントは、人々のためになることをしてあげるのだが結局…ということが書いてある作品である。

 ほかと見た目が違いすぎると、感謝されないものもいる、ということが伝わってきた話だった。

 

8.「かくれ家」 (『ひとにぎりの未来』に収録)

 ある強盗をしてしまった人がいて精神科をたずねて、どうにかならないか、と思っていると、バーを紹介される。そこには地下室があって、強盗はそこの地下室で暮らした。幾年か過ぎるが…。

 ある場所aは入ったら悪いから入りたくはない、と大半の人に思われているところがある。しかし、そのaではないところに入っても、その場所かも知れない、ということが書いてある話だと思った。

 

9.「待遇」 (『ご依頼の件』に収録)

 刑務所に入れられた人物がいて、その人物の待遇は悪くはない。むしろ、刑務所に入れられた割にはいい、それはなぜか、ということが書いてある。これには、ある刑が廃止されたことが関係しているのだが…

 ある刑が廃止されることを望む人は多くいると思うが、それを廃止したらどうなるのか、どうしなければいけないのかということを考えさせる内容だった。

 

ご依頼の件 (新潮文庫)

ご依頼の件 (新潮文庫)

 

 

 

10.「雄大な計画」 (『盗賊会社』に収録)

 三郎という青年がいて、その青年はある会社の入社試験を受け、その会社に入ったが、ほかの会社の入社試験も受けて、スパイになってほしいと言われる。三郎はその新たに入った会社でも奮闘し、昇進した…しかしスパイとしての活動はと言うと…

 優秀すぎる社員がどのようになるのか、ということが書いてある作品だと思った。

 

盗賊会社 (新潮文庫)

盗賊会社 (新潮文庫)

 

 

<おわりに>

 以上、自分が好きな作品を10こ、紹介した。少しマイナーな作品かも知れない。おなじ作品が好きだという方がいれば嬉しく思う。