警戒、疲れ

 洗面所に見たくもない虫がいた。名前は言わない。どうやって気づいたかというと、歯を磨いていて、鏡を見ている時だった、鏡に映った壁の上部に虫がおり、下のほうにどんどん下がってくる。このままでは地面に落ちてしまうのではないか、そして這ってこちらへやってくるのではないか、そう思ったときにちょうど歯磨きは終わり、逃げるように風呂場に入ることにした。

 

 風呂場から出てきて虫がいるのかあたりを見回したがいなくなっている、といっても警戒心はゆるまない。服を上げ、また、タオルをもち上げ、何度も振ってみて虫がくっついていないかどうか確認する、しかし、いない。どこに虫はいったのだろう……

 やっと洗面所を出て廊下を歩くといった段階に入る、が、警戒心は止まない。ドアを慎重に開け、ドアの向こう側を確認する、天井もする。ドアがひらいたら壁をくまなく確認し、虫がついていないことに安心する。いったいどこへ行ったのだろうか。

 

 警戒しすぎると疲れる、そう思ったーー警戒をゆるめたかった。