ルネ・マグリットの作品についての本

 ルネ・マグリットについては前々から興味があって、今回は彼の作品について書かれた本を手にした。今回手にした本はサントリー学芸賞をとったものである。ルネ・マグリットの生涯などが詳しく書いてある、という本ではなく彼の作品をどのように見ることができるのか、ということが書いてある本である。

 

・ルネ・フランソワ・ギスラン・マグリット(1898年11月21日 -1967年8月15日) …ベルギー・レシーヌ出身のシュルレアリスムの画家(Wikipedeaより)。

・今回手にした本…増成隆士、「思考の死角を視る マグリットのモチーフによる変奏」、勁草書房、1983年

・増成隆士(1943-)…東京大学文学部美学科卒業、同大学院博士課程中退、ミュンヘン大学で美学・哲学を学ぶ(Wikipediaより)。 

 

内容と感想

(内容)

 興味深い話が載っていた。ルネ・マグリットの絵をご存知の方は多くいるかも知れないが、彼の作品は一種フィクション的なところはある。しかしそれがフィクションであっても、現実に起こり得ない、というわけでは決してない、ということが書いてあった。

 

 ほかにはマグリットの作品とともにつぎのようなことが書かれていた。

 マグリットには<ユークリッドのプロムナード>という作品があって、これはカーテンと窓と、窓の前には画架があって、その画架に画布がセットされており、それが後ろの窓の外の風景と重なって見える、という作品である。そこは周りとの整合性があるというようにわれわれは思う。しかしもしその画布を外したら、外の風景はどう見えるのか。われわれは経験によって、外の風景がどうなのか、ということを知っているよう——画布のものと同じように思うが、実際は知らないのではないか、窓を開けたらもしかしたら画布の部分は<望遠鏡>のように無(または闇・不可解)が広がっているのではないか。

 または、マグリットには<千里眼>という作品があるのだが、その作品は、作中の人物が卵を見て鳥を描いている。その作品のように<ユークリッドのプロムナード>の画布の絵も、過去の絵、または未来の絵を描写したのではないか。それから<田園の鍵>という作品のように窓ガラスをもし割っても、同じ風景が出てくるのではないか、それは無限に続くのではないのか。あるいは<ユークリッドのプロムナード>では画布は外を見て描いたというわけではなく、たまたまもってきて置いてみると、外の風景と重なったのではないか。

 そんなことが書かれていた。

 

 上に書いたことは一部で、詳しくは本書を見ていただきたい。

 

 以下は二つの作品の画像である。<ユークリッドのプロムナード>という作品と<望遠鏡>という作品である。それ以外にも、いくつか上では、作品のタイトルを載せたが、載せる数が多いと好ましくないと思ったので、画像は載せていない。興味があれば参照していただきたい。

 

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マグリット、「ユークリッドのプロムナード」

 

 

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マグリット、「望遠鏡」

 

 

(感想)

 内容でも触れられていたが、マグリットの絵はいくらフィクションとはいえ、起こり得ないというわけではない。すごく起こる可能性というのは低いとしても。

 極端ではあるが、もしわれわれの経験をもとにした判断がつねに正しければ、ミスはおこることはない。

 もういちど言うが、マグリットの絵は本当に起こり得ないものというものが多い——それはファンタジーのようである。そしてそれをわれわれは過去の経験から判断している。が、もしかしたら起こりうる。ということは自身の経験からの判断が常に正しいというわけではない。——なにか起きたことを過去の経験と照らし合わせて判断することは間違えうるのだから、経験をもとに判断するときは気をつけなければならない(もちろん経験が正しいということもある。そちらの方が多い場合もある。また、いつも気をつけるということは難しいけれども)、ということは留めておく必要があると思った。

 

 

参考

引用した写真の原タイトル、年、出典について…

マグリット、<ユークリッドのプロムナード> (原タイトル…<Les Promenades d'Euclide>、1955年)

出典:https://www.wikiart.org/en/rene-magritte/where-euclide-walked-1955 

 

マグリット、<望遠鏡> (原タイトル…<La Lunette d'Approche>、1963年)

出典:https://www.wikiart.org/en/rene-magritte/the-looking-glass-1963

 

今回手にした本(再掲)…増成隆士、「思考の死角を視る マグリットのモチーフによる変奏」、勁草書房、1983年