スタインベック著「真珠」を読む

 スタインバックの「真珠」は、1940年3月11日から4月20日にかけてメキシコのコルテスの海、すなわちカリフォルニア湾へ海洋生物調査採集旅行に出かけた際に、ラパスにおいてスタインバックが聞いた民話を基にして、彼が1944年11月から翌年2月にかけて書いた中編小説である。最初は、1945年の「世界一の真珠」という標題のもとに『ウーマンズ・ホーム・コンパニヨン』誌に発表されたのち、1947年12月、「真珠」と改題され、単行本としてヴァイキング・プレス社から出版された。 (スタインベック著・中山喜代市訳、「真珠」、119頁(訳者解説の頁)を参照)

 

話の内容

 サソリに刺されてしまったコヨティートとその父親キーノと母親フアナが主にでてくる。

 コヨティーノの治療費を得る必要があった。真珠をキーノは見つけた。それは大きな真珠で町中に知れ渡りその真珠はすごいということになり、キーノがその真珠を売ることも注目された。が、他の町に行って真珠を売っても高値で売れず…。

 

 真珠を持っていることによって、次々に不幸がこの家族を襲う。

 

 

 キーノが真珠を見つけるシーン

  キーノは巧みに貝のふちからナイフをさっと入れた。ナイフをとおして筋肉がかたく引き締まるのが感じられた。彼がナイフの刃をてこのように動かすと、締まっていた筋肉が離れ、殻が二つに割れた。唇のような筋肉はのたうちまわったが、やがておさまった。キーノが肉を上げると、そこには月のように完全な大きな真珠が横たわっていた。その真珠は光をとらえると、それを純化して、銀色の白熱光にして投げ返してきた。それはカモメの卵と同じほど大きかった。世界でいちばん大きな真珠だった。 (スタインベック著・中山喜代市訳、「真珠」、28頁)

 

 Kino deftly slipped his knife into the edge of the shell. Through the knife he could feel the muscle tighten hard. He worked the blade lever-wise and the closing muscle parted and the shell fell apart. The lip-like flesh writhed up and then subsided. Kino lifted the flesh, and there it lay, the great pearl, perfect as the moon. It captured the light and refined it and gave it back in silver incandescence. It was as large as a sea gull’s egg. It was the greatest pearl in the world. (John Steinbeck, "The Pearl", p19)

 

 真珠を見つけたというニュースはすぐ広まるという場面

 ニュースは、少年たちがそれを伝えるために急いでかき集めて矢のように走りだすよりも、また、女たちが垣根ごしに大声で伝えるよりも、早く伝わるようである。 (スタインベック著・中山喜代市訳、「真珠」、30頁)

 

 News seems to move faster than small boys can scramble and dart to tell it, faster than women can call it over the fences. (John Steinbeck, "The Pearl", p22)

 

感想

 読解力不足で、キーノが真珠を売りに行ったところで起きた数々の不幸が、理解できないところがあった。

 真珠の値段が町によって違い、真珠の買取業者は数人、キーノに対して「この真珠は高くない」と言うシーンがあるのだが、そこがほんとうに(この真珠は高くないんだ)と言っているようで、そのフリがうまかった。

 

読みやすさなど

 英語で一章ずつ読んでいって、大体の意味を捉えていった。英語を一章読みおわったら日本語も読んだ。

 動物の出てくるところはやはりというか、読むのがむずかしい。

 

 前に読んだ「赤い小馬」よりは風景描写も少なく、読みやすかったのではないかと思う。

 

参考

今回読んだもの

スタインベック著・中山喜代市訳、「真珠」 (『スタインベック全集 10』、大阪教育図書、1999年より)

 

John Steinbeck, "The Pearl", New York: Penguin Books, 1992