桃尻関係

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スタインベック著「赤い小馬」を読む

 訳者がビアスの「悪魔の辞典」を訳した西川正身だったため、手にした。

 

 この話は4つに分かれている(「贈り物」、「大連峰」、「約束」、「民衆を導き行く者」)。それぞれ独立したものとして読むこともできるだろうが、登場人物や舞台は同じなので、つなげて読むこともできる。

 最初はこの本の三つ(「贈り物」、「大連峰」、「約束」)で構成される『赤い小馬』が1937年に単行本として出版されたようだが、翌年改めて出た短編集(長い谷間)にはこの本の4つ目の「民衆を導き行く者」も載っていたようだ。 (訳書のあとがきを参照)

 

 スタインベックが生まれたのはカリフォルニア州のほぼ中央、サリーナスの谷と呼ばれる地方のようでこの本の舞台もサリーナスの谷である。サリーナスは二つの山脈に挟まれた細長い湿地帯で、そこでは主に牧畜がおこなわれている。

 著者は1952年の秋、「エデンの東」を出した。以下それに似た部分があるというところ、また、「赤い小馬」を自身で解説したところがあったようでその部分を訳書から引用する。

 スタインベックは、1952年の秋、大作「エデンの東」を出した。そしてその一部分で、自分の一家とサリーナスの谷について語っているが、そこで語られていることは、多くの點で「赤い小馬」と符合する。たとえば、開卷第一ページで、サリーナスの谷の東西に横たわる二つの山脈のことを語り、東方の山脈ギャビランにたいしては愛情を、西方の山脈サンタ・ルシーアスにたいしては恐怖をおぼえた云々といっているのは、「大連峰」の少年ジョウディの氣持そのままである。その他、符合する點はいくつもあり、それから推して、「赤い小馬」は、スタインベックの自叙傳的な作品だと見て誤りないであろう。

 スタインベック自身は、この作品を解説して、次のように言っている——

「赤い小馬」はずっと以前、私の一家が悲しみに打ち沈んでいたときに書かれたものである。初めての死が訪れ、一家の者は、子供はすべて不滅なものと信じていたことから、完全に打ちのめされてしまった。おそらく人は、男であれ女であれ、このようなことから決して成人するのだろう。初めて「何故?」という疑問に接して苦しみ惱み、それを受け入れ、やがて子供は大人になって行く。「赤い小馬」は、このようにものを失い、それを受け入れ、やがて成長して行く過程を描き出そうとした試み(なんだったら實驗と言ってもいい)であった。 

(スタインベック著・西川正身訳、『赤い小馬』、新潮文庫、1957年、153-154頁)

 

内容

 主人公はジョウディという少年、10歳。ジョウディの家にはほかに母親と父親と雇い人のビリー・バックがいる。

 

1 贈り物 (The Gift) ジョウディが父親に馬をもらうということ、その馬を雨の降る日に外に出していたことがあり、馬は弱まり死んでしまったということが書かれている。

 ジョウディは馬に付きっきりでせねばならない勤めを忘れてしまった場面——

 ジョウディは、母親が馬小屋にはいってきたのに氣がつかなかった。彼女はぷんぷんしながらはいってきたのだが、小馬と、その世話をしているわが子の様子をうかがい見ているうちに、なんともいえない誇らしい氣持が湧き上がってくるのを感じた。

 「薪入れのことは忘れてしまったのかい?」 彼女はやさしくたずねた。 「もうすぐ日が暮れるというのに、うちの中には薪が一本もないんだよ。それにまだ鶏に餌をやってもいないし」 ジョウディはあわてて道具を片附けた。 「ああ、ぼく、忘れてた」「そうかい。これからはね、仕事を先にすませてしまうのだよ。そうすれば、忘れっこはないからね。わたしが氣をつけていなかろうものなら、お前、小馬がきたので、きっと物忘れをすることだろうよ」 (スタインベック著・西川正身訳、『赤い小馬』、新潮文庫、1957年、23-24頁)

  Jody did not hear his mother enter the barn. She was angry when she came, but when she looked in at the pony and at Jody working over him, she felt a curious pride rise up in her. "Have you forgot the wood-box?" she asked gently. "It's not far off from dark and there's not a stick of wood in the house, and the chickens aren't fed."

 Jody quickly put up his tools. "I forgot, ma'am."  "Well, after this do your chores first. Then you won't forget. I expect you'll forget lots of things now if I don't keep an eye on you."

(John Steinbeck, "The red pony", New York: Viking Press, 1967, p19)

 

2 大連峰  (The Great Mountains) ジターノというパイサーノがこの近くの家で生まれたが、その家は雨で流されてしまい、「戻ってきたから泊めてくれ」とジョウディ一家に言うようすがかかれている。しかし容易には受け入れない。

 

※パイサーノとは (訳書の注の部分)

 パイサーノというのは、もとはスペイン語で、「田舎者」を意味するが、キャルフォルニア州の一部にはパイサーノと呼ばれる人びとが住んでいて、スタインベックは、小説「トートィーア・フラット」の中でこの人びとの生活を描いている。それによると、パイサーノは、スペイン人、アメリカ土人、メキシコ人その他の血がまじりあった連中で、浮浪者のような生活をいとなんでいるそうである。 (スタインベック著・西川正身訳、『赤い小馬』、新潮文庫、1957年、84-85頁)

 

3 約束 (The Promise) 雇い人のビリーバックが「ジョウディは馬を愛着をもって育てるやつだ」といったので、父親がネリーという馬をジョウディにあげて、子供が産まれるまでジョウディがネリーを育てるようすがかかれる。

 

4 開拓者 (The Leader of the People) ジョウディの母親の父親が家にやってくるようすがかかれる。母方の祖父は大陸横断の話とインディアンの話ばかりする。

 

感想

 もう少しアメリカの土地感覚があればもっと面白くよめるだろうと思いながら読んだ。自然が多くある地域だという事はわかった。

 風景描写を英語で読むのはむずかしいと思った。

 

参考

今回読んだもの (英語版と日本語訳をわからない部分は交互に読んでいった。とくに風景の描写は日本語訳に頼った。) 

スタインベック著・西川正身訳、『赤い小馬』、新潮文庫、1957年

(John Steinbeck, "The red pony", New York: Viking Press, 1967)