第59回は丸谷才一の「年の残り」と今回紹介する「三匹の蟹」が芥川賞の受賞作である。
内容
アメリカにやってきた日本人夫婦の由梨と武がパーティーを開くことになる。けれども由梨はパーティーに来る人々を嫌悪しているところがある。
パーティーには続々人がやってきて、会話が進む。
由梨はパーティーの途中で「行かなくちゃ」と言って抜け出す。そして(どこだっていい)と思いながら、遊園地に行こうと決めた。そこで桃色シャツの男に出会い、二人の様子が書かれる。
感想
パーティーの途中、会話があったが何をいっているのかは読解力不足で、わからなかった。会話文が多く、心理描写は少なかったという印象。
題名である「三匹の蟹」というのは、丸木小屋のようである。これ以外にも蟹が出てくるところがあった、また、最初の方には風景描写があった、これらはなにかを暗示しているのだろう、しかし、深くは読まずに終えたので何とも言えない。
話の最初の方、お菓子をパーティーに来る人たちのために由梨が作っているというシーンがある。そのときパーティーに来る人たちのことをよく思っていないという場面がある。そこではお菓子を作っているということが何度も出てきて強調されたという印象がある。読んでいる人の視点をお菓子にもっていくなどの意図があるのだろうか。
また、話の後半の方、桃色シャツの男と由梨が二人でいるときに、「由梨はかぶりをふった。」という文が何回か繰り返されて出てくる。ここは強い否定を表しているのかと思った。
選評
三島由紀夫は以下のようにいう。
「三匹の蟹」は、最後の二行が巧いし、短編として時間の錯綜する構成も巧い。桃いろのシャツの男は、わざと無性格、無個性に描きながら、アメリカ人特有のベタッとした、ムーッとしたところは出ている。ただパーティーの会話が、嫌悪と倦怠を作者に伝える手段であるにしても、作者が得意になっているという感じが鼻をつく。しかし、ともあれ、才気ある作品であった。 (491頁)
参考
今回読んだもの 大庭みな子、「三匹の蟹」 (「芥川賞全集 第8巻」より)、文藝春秋、1982年