高橋三千綱著「九月の空」(第79回 (1978年上半期) 芥川賞受賞作)を読む

 以下話の内容や感想などを述べる。

 

 

 

内容

 主人公は小林勇、高校一年生、剣道部に入っている。小林が大会の会場にいるところから始まる。他にも剣道部員はおり、その試合もある。

 剣道部には松山という女が入ってきて、小林は年齢もあり、練習中も松山のことを考えてしまう。しかし松山は剣道部に入っていたら小林に迷惑がかかると思って辞めることにする。

 剣道の試合の様子と、年齢だから特有で直面することと、女が入ってきてからの小林の様子が中心にかかれている。

 

感想

 文章は平易だった。自分がこういった、スポーツの漫画をよく読んでいたこともあったせいか、よくありがちな感じはした。けれども話の流れは上手いなと思った。——最初剣道の試合がはじまるのだがそこではなかなか試合は進まない。そしてこの前行ったところの旅の話が出てきて、女が出てきたことによって年齢ゆえに考えるようなことが出てきて、……そして最後の試合の所は最初よりもペースよく進む。最初と最後の試合のペースが違うところがいいと思った。

 

 全体的に爽やかだと思った。

 

選評

 銓衡委員会には井上靖、遠藤周作、瀧井孝作、中村光夫、丹羽文雄、安岡章太郎、吉行淳之介の諸委員に今回から開高武、丸谷才一の二氏が加わり十委員全員が出席した。

 中村光夫は以下のようにいう。

 高橋三千綱氏の「九月の空」は題名通り、初秋の空のように爽やかな小説です。思春期を扱って厭味でなく、いわゆる青春小説が文学になり得た稀な例でしょう。

 とくに前半の少年の友情を描いた部分はすぐれていますが、後半に少女が登場すると急に筆がみだれて、興を削がれます。しかし考え方によれば、この目鼻だちのよすぎる小説に未熟な部分があるのは、作者の将来性を示す、とも云えましょう。 (338頁)

 

参考

今回読んだもの 高橋三千綱、「九月の空」 (「芥川賞全集 第12巻」より)、文藝春秋、1983年