五味康祏著「喪神」(第28回 (1952年下半期) 芥川賞受賞作)を読む

 松本清張の「或る「小倉日記」伝」と同時受賞した作品である。五味康祏のものは初めて読む。以下本の内容や感想などを述べる。

 

本の内容

 瀬名波幻雲斎信伴の業は妖剣だといわれている。幻雲斎は幾らか試合をし、強さを見せつける。その後、試合で敗れた人物の知り合いや子供が、幻雲斎と戦うことになるがやはり強い。試合で敗れた稲葉四郎のこども哲郎太が幻雲斎に挑んだが幻雲斎は哲郎太のことを殺さず、……多武峯という場所でともに生活することにした。

 

感想

 全体的に漢字が古風なので読んだ後、その漢字がうまく頭に入って来たとは思わない。が、なんとなくの意味は取れたと思う。バカボンドしか読んだことはないが宮本武蔵の様なのだろうか、自然的というか、人間の本能的というか、そういうものを重んじる幻雲斎が描かれてあった。

  

選評

銓衡委員は、宇野、佐藤、瀧井、川端、丹羽、舟橋、井上靖、石川達三である。

 

丹羽文雄は以下のようにいう。

 「新潮」にえらばれただけに「喪神」は決して悪い作品ではない。しかし受賞作品としては難がある。時代小説の童話と思えば納得できないこともないが、そこに現れる哲学にしろ決闘の場面にしろ、童話的な興味をおぼえるだけで、私にはそんなに深いものとは思えなかった。 (391頁)

 

瀧井孝作は以下のようにいう。

 

五味康祏の「喪神」は、大衆小説風の面白味で、軽い才筆というのか、これは、「喪神」は、ショッキリ角力を見たような妙な感じのものでした。 (394頁)

 

 

参考

 五味康祏、「喪神」 (「芥川賞全集 第五巻」より)、文藝春秋、1982年