三浦哲郎著『ユタとふしぎな仲間たち』を読む

 新潮文庫の『忍ぶ川』を読んでいたのだが、連作なのだろうか、似たような設定が続くのが飽きてきたためほかの作品も読もうと本書を読むことにした。

 

 あらすじは東京から東北へいったがあまりなじめなかった小学六年生の少年ユタが座敷わらしに会ったのをきっかけに友達ができるようになったり体を鍛えて強くなったりするというもの。

 この作品ででてくる座敷わらしは一人ではなく、九人いるというのに驚いた。それぞれが若いうちに何らかの形で死んでしまったが故に座敷わらしになったのだという。その中でもペドロというユタを九人の元へ案内してくれたものは五男であり間引き——親に殺された——されてしまったという。この五男という兄弟が多い感じは三浦哲郎が六人兄弟だったということとなんとなく被っている感じがした。そのあたりは『忍ぶ川』の作品の設定でもそんな感じだ。

 印象に残ったところはユタが眠すぎて銀行の玄関の自動シャッターのように、どうしようもない重たさで垂れ下がってくる瞼を支えようとしながら……という一文。自動シャッターは重さを表す表現としてうまいなと思った。芥川の「河童」にでてくる河童や遠野物語にでてくる奇妙なもののときもそうだがこの作品に出てくる座敷わらしというのもどこか変わっていて面白いので注目した。特徴をまとめると以下の様——ビートルズ風の髪、白くて小さいが大人の脛みたい、紺ガスリの着物を着用、あごひげを生やしているが子供っぽい顔……。

 全体的にそれぞれの大きな事件に突っ込んでいくということはなく、又座敷わらし九人それぞれに人物設定が細かくあるという訳でもなく終わり方は火事があってユタと座敷わらしたちは別れるので少し急な感じもしたが、あっさりしたものを読みたい時にはいいと思った。

 

参考 三浦哲郎、『ユタとふしぎな仲間たち』、新潮文庫、2005年