サトウハチローが作詞した曲は「悲しくてやりきれない」や「胸の振子」等は知っていた。
本書を読んで、そして曲も聞いてみると他にも聞いたことがあるようなものがあった。——「リンゴの唄」・「エンゼルはいつでも」・「ちいさい秋みつけた」・「うれしいひなまつり」。結構ある。
聞いたことはなかったが「うちの女房にゃ髭がある」・「もしも月給が上ったら」という曲は面白そうだなと思った。
曲なしで詞だけを見るということは不断からしないが、今回はしてみた。それだとまた随分違う。曲もあった方が記憶に残りやすいと思った。
サトウハチローの曲はこの本では母親について書かれているものが多かった。しかし他人の母親のことだしな…と思ってあまり深く入り込める感じではなかった。母親について書かれたもので単にうまいなと思ったものを二つ載せる——
ふえた白髪も
たるんだのども
お前のはふしぎに
美しさをましたね
——これは父の声……
手におえないのがいますからね
——母の小声の答え……
となりの部屋で首をすくめて
舌をだしたのは誰だか おわかりでしょう
(ふえた白髪も)
感想 これは母の苦労を白髪で表している、そしてそれは誰のせいかということを舌で表している——どちらも身体で表しているのがうまいなと思った。
生卵は
のどがいがらっぽくなるからいや
うで卵は
おならくさい
こんなことをいって
卵をひとつもたべなかった母
わたしが母の命日に
沢山卵をそなえるのは
そのウソに頭をさげたいからなのです
(生卵は)
感想 本当はなぜ食べないのか、ということはいろいろ想像できる。やせ我慢からか、お金がないからか、何かこだわりがあるのか…。それはわからないが、食べない母を嘘をついているといって、仏壇なのか墓なのかに逆に卵をいっぱい供えるというのは面白いと思った。
文字を読んで終わりというのではなく曲を聞いてみるのもいいなと思った。
参考
サトウハチロー、『サトウハチロー詩集』、ハルキ文庫、2004年