芥川龍之介の作品を読み漁る——「保吉の手帳から」

「保吉の手帳から」

これは筋があるという訳ではなく、断片的な話の組み合わせで成り立っている。特に印象に残った話は「勇ましい守衛」というものだ。——保吉が学校へ通うと大浦という敬礼をよくする守衛が盗人のために海へ投げ込まれた、なぜかと保吉が聞くと、賞与がなにももらえないからだと言った。……では賞与が出たならば危険を冒すのかと保吉が聞くと大浦という守衛はそれもまた疑問だといった。で、大浦は保吉の煙草に火をつけた。

こういうaがないからbしない、じゃあaがあればbするのかと問われて、それも微妙だ……という風に答える一筋縄にはいかないことと海へ投げられたという事件をあっけらかんと書いた、なんかもやもやする話は妙に自分の中で残る。

参考 芥川龍之介、『芥川龍之介全集5』、ちくま文庫、1999年