「二人小町」
あらすじ 最初小野小町の元へ黄泉の使いが現れ、地獄に連れていくといっていたが小野小町は少々の胤を宿しているから嫌だという。黄泉の使いはそれならば代わりがいるといい、小野小町は誰も逢う人がいない玉造の小町を連れていけばいいのではという。
玉造の小町は暗穴道まで背負われて連れられ、このまま地獄へ行ってしまうことに気づく。黄泉の使いに小野小町の代わりに地獄へ行くことになったということを聞き、なぜ代わりになったのかと尋ねると、あの人は今身持ちなので……と黄泉の使いが言うのでそれは嘘だと玉造の小町はいう。玉造の小町は泣きじゃくり小野小町の元へ行くように言う。
黄泉の使いが小野小町の元へ行くとそこには通すことはできぬと三十番神がいる。そして黄泉の使いはやっつけられる。
数十年後、小野小町と玉造の小町の二人は乞食になり枯芒の原で話している。——「黄泉の使いが来た時に死んでいたらよかったのに。」そこに黄泉の使いが現れたが黄泉の使いは二人を連れて行く気はない。あの時騙された……女は怖いものだといい、反対に小町二人は男こそ——と言いあう。結局、黄泉の使いには連れて行ってもらえず、小町二人は泣き伏す。
「おしの」
南蛮時の西洋人の神父のもと、息子が大病にかかったということで母が来てお見舞いしてほしいということを言った。神父は承諾したが女が清水寺の観世音菩薩の冥護にすがるような言葉を口挟んだので神父は怒り、まことの天主を信じなさいという。母はそれはどういうものかというと神父はジェズス・キリスト様のことだといい、その生涯を話す。母はそれを聞き、磔木にかかったまま泣き言をいったものを信じるなど臆病だといい、南無阿弥陀仏と書いた羽織を纏った浪人の夫はもっと勇敢だったと話し、くるりと神父に背を向け堂外へ去ったというもの。
最初顔色が悪く目の周りに暈をとった母がキリストの話を聞きそれを信じるのはいやだと強く拒絶する一連の流れがすごいなと思った。最終的には毒風を避けるようにさっさと、あっさり堂外へ出ている。
参考 芥川龍之介、『芥川龍之介全集5』、ちくま文庫、1999年