芥川龍之介の作品を読み漁る——「魚河岸」、「百合」、「三つの宝」

「魚河岸」

春の夜、保吉と俳人の露柴、洋画家の風中、蒔絵の如丹と魚河岸(日本橋川に臨んだ中央区元船町にあった魚を荷揚げする海岸)を歩いていると狭い店があり入った。後から入ってきた、中折れ帽を被った客——保吉はこういう客は泉鏡花の小説だと芸者か何かに退治られるやつだと思っていた——は横柄な態度で食事をしていた。その客は意外にも俳人の露紫の名を呼び、その後露紫の機嫌を伺い続けていた。保吉はその後露紫に同情できなかった、そして陽気にもなれなかったという話。

横柄で豪快な人物が意外と礼儀正しくて…人は見かけによらずというのか、しかしそれを見てもいい気分になるわけではなく……ということはわかるなと思った。店に入ってきた男の横柄さの描写を拾っていく——客は外套の毛皮の襟に太った頬をうずめながら、見るというよりは、睨むように、狭い店の中へ目をやった。それから一言の挨拶もせず、如丹という若い衆との間の席へ、大きい体を割り込ませた。……客は註文を通したのち、横柄に煙草をふかし始めた。その姿は見れば見るほど、敵客の寸法にはまっていた。脂ぎった赤ら顔はもちろん、大島の羽織、認めになる指輪、——こどごとく型をい出なかった。保吉はいよいよ中てられたから……。

 

「百合」

今年七歳の良吉と家が隣の金三が二本の百合を近所の畑に見つけたということでその百合を巡って——例えば掘っていいのか否かや、この百合からどのくらい花が咲くのかや、いつ咲くのか等言い合って喧嘩するという話。未完の作品。

この二人の喧嘩の最中、介入してくるものがあるがそれが妙にそれっぽかったので二人のせておく。一人目は良吉の母。「良平!これ!御飯を食べかけて、——」といった。二人目は学校友達の母親。大きい笊を抱えながら何か胡散臭そうに二人を見比べながら登場。二人が喧嘩を相撲してるだけだよとごまかすが「嘘つき!喧嘩だ癖に!」と叱った。

 

「三つの宝」

森の中。三人の盗賊が宝を争っており——その宝とは一飛びに千里飛ぶ長靴、着れば姿の隠れるマントル、鉄でも真っ二つに切れる剣の三つのことで、そこに王子が通りかかりその宝を見て気に入ったので王子のもつ高級なものと交換してもらうことにした。王子はその後酒場でパンをかじっていると王女に嫌われている黒ん坊の王様が王女と結婚してしまうのではないか——その王さまは王子がもつ三つの宝とおなじものをもつと聞いた王子は王女を助けてやろうと黒ん坊の王様の元へ向かうことにした。王子のもつ三つの宝はどれも使い物にならなかった、反対に王さまの持つ宝物はどれも本物だったが王子は王さまに勝ったという話。

黒ん坊の王様は手抜かりの多いいいやつなんじゃないかと思った。——三つの宝の力を見せつけるシーンでは長靴で一度アフリカに行ってきて王子と王女の前に現れたが王女がもう一度行ってくるように言うと「いや、今日はあなたと一しょに、ゆっくり御話がしたい」といい、マントルを着ると消えたはいいが王女はほんとに消えた、うれしくてたまらないといい、王子を剣で切るにあたっては王子を殺してしまっては王女に憎まれてしまうことを心配している。

 

参考 芥川龍之介、『芥川龍之介全集5』、ちくま文庫、1999年