芥川龍之介の作品を読み漁る——「夢」

「夢」

どういう話かざっというと画家であるわたしが制作の為、mという家へ出かけ女をモデルとして雇うがそのうちにそのモデルを絞め殺してしまったという夢を見、現実にもいなくなってしまった、また、わたしが葱畠で無意識に火をつけていたことなどを思い出し、或いは本郷東片町を歩いているとき寂しい往来を歩いており、これは夢で見たことがあるのと変わらなかった等、現実と夢、無意識の関係を書いたものである。「けれども今何か起れば、それもたちまちその夢の中の出来事になり兼ねない心もちもした。」という文で結んでいる。モデルが眉毛さえ動かさず声も一本調子で、目さえも動かさず私は圧迫を感じたというところが印象に残った。描く側としてはモデルが動かないほうが描きやすいのだろうが、反面、何かの像をモデルとして描いているみたいで気味悪いだろうなと思った。

 

参考 芥川龍之介、1991年、『芥川龍之介全集6』、ちくま文庫