ギッシングの作品を読む

 ジョージ・ギッシング(1857-1903)の作品をいくつか読んだ。以下話の内容や印象にのこったところなどを書いていく。

 

「蜘蛛の巣のある家」('The house of cobwebs')

 家への愛情や出会った人との友情について主に書かれている。

 この話の主人公は、本を三か月以内に書き上げなければならないゴールドソープ(Goldthorpe)という男で借家で貧乏暮らしをしている。しかし、お金が足らず、より安い家を探さなければならない。ロンドンへ行き、ゴールドソープはぼろくて、蜘蛛の巣だらけの家を発見する。その家からはHome, Sweet Homeがコンサーティーナ(アコーディオン族)によって演奏されているのが聞こえる。その家の主人であるスパイサーさん(Mr. Spicer)に出会い、できるだけ安く部屋を貸してくれるよう懇願する。家の主人であるスパイサーさんは本が好きで、いろいろな作品を知っていた。ゴールドソープと意気投合し、親しく、良い関係が続いた。しだいにスパイサーさんはゴールドソープに色々な話をし始める。スペンサーさんはかつて化学者の見習いや助手であったこと。この蜘蛛の巣のある家は死んだ叔父から受け継いだものだが、土地争いがあり、一年のみスペンサーさんのものであること。スペンサーさんがいつか借家ではない完全に自分が所有できる家を夢見ていること。

 話はスペンサーさんは庭の園芸に夢中になりはじめ、また、ゴールドソープは本の原稿を書き、それがどうなっていくのか、ゴールドソープの生活はどのようになるのかということなどが続く。

 

Home, Sweet Homeについて 

 蜘蛛の巣だらけの家からコンサーティーナで弾いたHome, Sweet Homeが聞えてきた。これはアメリカの俳優であり劇作家でもあるジョン・ハワード・ペイン(John Howard Payne (1791-1852))が翻案した1823年のClari; or the Maid of Milanというオペラの中の曲である。南北戦争の時にも歌われていた。(ウィキを参照) 

 

 

話に出てきた作家について

 スペンサーさんは父親が貧しいながらも少しの本を持っていて、それを戸棚にしまっている。また、スペンサーさんは本に詳しくて、ゴールドソープの貧乏さを例えるときにサミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson、1709-1784)やトマス・チャタートン(Thomas Chatterton、1752-1770)の名前を出していた。主人公のゴールドソープという名前だがイギリスの詩人でゴールド・スミス(Oliver Goldsmith、1728 -1774)という人がおり、偶然名前が似ていると気づくシーンがあった。

 

 題名の一部になっている蜘蛛の巣は、最初ゴールドソープがこの家に来た時から窓や家の通路、階段などいたるところに蜘蛛の巣があったのだが、スパイサーさんが「この家の本当の所有者は蜘蛛たちだ」と言って邪険に扱わない様子が書かれていてよかった。

 

 

 

 

 

「節操ある父親」('The scrupulous father')

 娘と節操のある父がそれぞれ見知らぬ男に対してどのように対応するのかという話である。

 休みの期間の最後のほうで、宿の一室では中年の男ホイストン氏(Mr. Whiston)とその娘のローズ(Rose)は静かに食事をしている。そこにやかましく、うるさい、「おはようございます。」と言ってやってきた赤い髪の男ルーファス(Rufus( 'rufus'はラテン語で「赤」を意味する))がやってくる。ルーファスはあとから来た大きな農夫とビールの話をし、父と娘の二人は出て行くことにした。ホイストン氏はさきほどのやかましい人間がビールの話をしていたのをよく思っておらず、水を飲みつつ不平を言っている。ホイストン氏は製図工で決してお金持ちではないながらも厳格で、良心をもっており、娘のローズに対しても厳しい、そして見知らぬ人に対しては安全ではないと考えている。ローズは花をその一室に置き忘れたことに気づいたが、父はそこに戻ることをよく思っていないだろうと考え、戻らず何も言わないでいる。二人は、住む場所に電車で戻ろうとプラットフォームで待っているとき、ルーファスがローズの忘れていた花をもってきてくれた。だが、ホイストン氏はそれを見ていない。ローズは持ってきてくれたことをとても喜んだ。その後も偶然ローズがルーファスに電車で会う機会があり、ルーファスは今度は乗客と煙草の話をしている。そしてルーファスとローズは父のいない間、名前や住所の交換をする。父親はルーファスを嫌っている一方ローズはルーファスに心好かれており、今までの父親との真面目な暮らしぶりはよかったのかなどを問うている。

 父親はぐったりしている。なにがあったのか…

 

 ルーファスがローズに忘れた花を持ってきたところのちょっとした描写がよかった。(以下訳-kankeijowbone)

'He had the flowers in his hand, their stems carefully protected by a piece of paper.'(p.92,93)

「彼は手に花を持っていた。花の茎は紙切れで大切に守られていた。」

 

 それ以前には花の紙切れは出てこなかったが、ここでは出てきている。ルーファスが包んだのだろうか。気遣いを感じた。

 

 ローズはルーファスが忘れた花を届けたことを知っているのだが、ローズの父親は知らないということもあってルーファスに対しての態度や、呼び方の温度差が面白かった。

 

 

 

 

 

「クリストファーソン」('Christopherson')

 所有している本をめぐっての話である。 

 主人公の私(I)がロンドンの古本屋で本を買った。それに対して、みすぼらしいが教養のありそうな60代くらいの男であるクリストファーソン(Christopherson)が話しかけてきて、その本はもともとクリストファーソンの本だったということを言ってきた。

 私がクリストファーソンと話をすると、もともと大きな書庫をもっていたのだが、仕事で失敗してしまい、いまは少しの本しかもっていないようだ(といってもそれは本人が「少し」と言っていただけで、私がクリストファーソンの本を見に行くと少しではなく、多くあった)。また、最近妻の体調が悪く、二人そろって妻の親戚であるキーティングさん(Mrs. Keeting)のもっているノーフォーク(Norfork)の空気のいい家に移ることになっており、そのつもりでいたのだが、キーティングさんがクリストファーソンのもつ本を自分の家に移すことがとても嫌で断られてしまう。クリストファーソンは落ち込み、今まで妻の稼いだお金で本を買っていたことがあってそれを懺悔し…。

 

 このようなかんじであった。

 

 何を犠牲とするのかということが出てきていてそれは主に三つあった。キーティングさんが本を持ち込まれるのが嫌だと言っていたため処分してキーティングさんの家に行き、〈本を犠牲にする〉か、今の家に住み続け〈キーティングさんの持つ家に住んでいいということを犠牲にする〉のか、それからキーティングさんに本のせいで断られてしまい、クリストファーソンは妻が行きたいだろうと思っていたキーティングさんのもとに行けず、それのせいで妻の病状がますます悪化した思うのだが、〈妻を犠牲にする〉のか。

 

 

 クリストファーソンの妻を心配する様子が印象にのこった。

'He worries her, poor man, sitting there and asking her every two minutes how she feels.'

「彼は弱っている彼女のそばに座り、二分毎に体調を聞いた。」(p.62)

 

'I uttered a few words of encouragement, but they had the opposite effect to that designed. 

'Don't tell me that,' he moaned, half resentfully. 

'She's dying--she's dying--say what they will, I know it.''(p.62)

「私は励ましの言葉をいくつかかけたがそれらは思っていたものと反対の結果となった。

「そんなことはいわないでくれ。」彼は怒り混じりに嘆いた。

「彼女は死にそうだ、死にそうなんだ、何と言おうとも、私はそう思う。」」 

 

 ここでは彼女の病状は急に悪化しはじめたなどというわけではないが、クリストファーソンはすごく心配している。引用した部分では取り乱している様子が見て取れる。そのあともクリストファーソンは妻がこうなったのは自分が悪いのだ、ということを必要以上に思いこむ。

 

 

 

 三作品ともそれぞれ進み方がゆっくりしていていいとおもった。ギッシングの作品はまたほかのも読みたい。

 

 

調べた語句の一部(weblioや電子辞書などより)

「蜘蛛の巣のある家」('The house of cobwebs')

wherewith (疑問詞)何で・何によって

hedgerow 生垣をなす低木列

buff 淡黄褐色

stucco 化粧しっくい

marauder ごろつき 

unimposing 目立たない cf. conspicuous・imposing 目立つ

open air 野外 

〈植物〉 jerusalem artichoke キクイモ artichoke チョウセンアザミ

whilst while 

next of kin 近親者

knavish 悪党のような

torrid やきこげた

abode 住居

 

「節操ある父親」('The scrupulous father')

brew (ビールなどを)醸造する cf. blow 風が吹く brow 眉

speculation 思索、考察

abominable いとうべき

vex 苦しめる、うるさがらせる

alight 降り立つ、舞い降りる cf. aloof 離れて、遠ざかって

refreshment-room 軽食堂

martyrdom 苦痛(殉教という意味もある)

respectabilities 因習的儀礼

perturbation 心の動揺、不安

tyrannous 横暴な、専制君主的な

 

「クリストファーソン」('Christopherson')

vista 見通し、展望

flyleaf 書物の巻頭

woebegone 悲しげな

encumber 邪魔する、妨げる

henceforth 今後

hoard 秘蔵

infernal 黄泉の国の、地獄のような、悪魔のような cf. diabolic 悪魔のような、魔性の

not far to seek 明白

preliminary 序文の、仮の

fainting fit 失神

splutter ブツブツ音をたてる、せきこんでゴホゴホ言う

beckon 手招く

yonder あそこに

stint 切り詰める ex('stint'には下線を引いた). You shall know everything --for years I have lived on the earnings of her labour. Worse than that, I have starved and stinted her to buy books.(p.65)

 

 

参考

三作品ともGeorge Gissing, The house of cobwebs(Edinburgh: Constable's Miscellany, 1931)に収録されている。

 

 

キャサリン・マンスフィールドの作品を読む

 キャサリン・マンスフィールド(1888-1923)の作品をいくつか読んだ。

 以下それぞれ内容などを書いていく。

 

「一杯の紅茶」('A Cup of Tea')

 お金持ちと美しさについて書かれている。

 主人公はローズマリー・フェル(Rosemary Fell)といって、容姿は美しいとはすこし違うのだがお金は持っている。高価な買い物をしたいと思った後、お金がなく、やつれているスミス(Smith)に出会い、「紅茶一杯分のお金をくれませんか。」と言われて、フェルの家に連れて行って紅茶をあげるということがぞくぞくする感じがしたため、そうすることにした。スミスはそのことを恐れおおくびくびくしている(身分的なこともあるのだろう)一方、フェルはそのことに勝利感をおぼえている、そしてスミスに対してそんなにびくびくしないでということを言っている。そこにフェルの夫であるフィリップ(Philip)が来て「スミスはとても美しかった」ということを言い、フェルは憤るのだが...

 

 お金はないが美しさのあるスミスの呼ばれ方がさまざまあったが、'creature'と呼ばれることもあった。'a little battered creature'(p.347)「少しやつれた人間」や'the poor little creature'(p.350)「かわいそうな小さな人間」、 'a light, frail creature'(p.350)「小さな、もろい人間」 など。スミスに使われていた'creature'はお金持ちのローズマリー・フェルに対して、お金のないスミスを身分的なことで蔑んでいるのだと思った。'creature'が使われていたのはほかにも、フィリップがスミスを褒めた後、フェルがフィリップに'You absurd creature!'(p.352) 「おかしな人」というところがある。ここでは軽蔑してそう言っているのだと思った。 

 'creature'は人間以外の生き物や動物に使われることが多いイメージがあったため、人間に使うことはあまり見たことがなく特徴的だと思った。調べるとほかに「不思議な動物」、「産物」として使われることもあるとわかった。'crature'と似た語句として'animal'(ここで挙げるのは'little animals'として使われていた。)も人間に使われる場合があるのを思い出した。前にもほかの一編については書いたが、シャーウッド・アンダーソンの「ワインズバーグ・オハイオ」(Sherwood Anderson, Winesburg, Ohio)の'Sophistication'という章には男女が抱き合うが、気恥ずかしさを感じて、その気恥ずかしさを和らげようとしている場面がある。そこで'animal'('little animals')は使われる。(以下の訳-kankeijowbone, 'little animals'(「小動物」)に下線を引いた。)

'They laughed and began to pull and haul at each other. In some way chastened and purified by the mood they had been in, they became, not man and woman, not boy and girl, but excited little animals.'(Sherwood Anderson, Winesburg, Ohio, p.242)

「彼らは笑い、お互いに強く引っ張りはじめた。ある意味で、彼らの雰囲気のために垢ぬけてなく純粋になって、二人は男と女でなく、また少年と少女でなく、興奮した小動物になっていった。」

 

 'creature'や'animal'などの用語が出てきたら、今後もどういう意味なのか調べるなどし、気をつけて見ていきたい。

 

 フェルにもてなされるスミスはおそれ多くて、泣いたりするのだが、その表現が大きく面白かった。 

 

 フェルとスミスが同じ机に着き、スミスがサンドイッチを食べたり、紅茶を飲んでいるとき、フェルが一緒にご飯を食べようとしないシーンがあって気になった。

'As for herself she didn't eat; she smoked and looked away tactfully so that the other should not be shy.'

「彼女(フェル)は食べようとはしなかった。彼女は煙草をふかし、もうひとり(スミス)がためらわないように(思い切って食事を取ることができるように)気を遣って目をそらした。」

 

 とくに〈なぜ目を合わし一緒に食べるとためらうと思うのか〉ということが気になった。多分スミスはフェルと一緒に食べて、目が合うと相手の家に居るためもあり、食べ方のマナー、ペースなどを相手に合わせなくてはならならず、気を遣ってしまい、それで人目を気にせず満足に食べられず、ためらうと思うのではないか、また見られてだと食事がしにくくなるとフェルが察したのではないかと思った。

 

 

 

 

 

「蠅」('The fly')

 会話に死んだ息子について出てきて思い出し、近くにいた蠅がその死と何らかの関係をもっている話である。

 ウッドフィールドさん(Mr. Woodfifield)が彼の友達のボス(Boss)の部屋にいる。ボスはさまざまな装飾や家具を自慢している。だが、ウッドフィールドさんの目は部屋に飾ってある写真の男の子(六年前に亡くなったボスの息子)から離れず、ボスは気を引くことができていない。ウッドフィールドさんは先週ベルギーに娘たちが息子の墓を見に行ったとき、ボスの息子の墓も見て、それはきちんとしていたことなどを言う。その話が出ると、ボスはショックを受け、使いに誰にも会いたくないことを言い部屋を閉め、息子が死んでからの六年はなんと早いのか、などを思っている。そんなとき蠅がインク入れに落ちたのを見つけ助けてほしそうだったため、ペンで吸い取り紙に移した。だが、思い付きでボスはインクを蠅の上に何度も落とし…

 

 蠅が必死に自らの体からインクの染みを拭い取ろうとするシーンがあって、そこがよかった。なぜ蠅の上にインクを落とし、蠅を苦しめるようなことをしたのか、ということはこの話についての他のサイトや論文も色々見たが、様々あった。この作品が出たのが1922年だが当時作者のマンスフィールド(1923年に亡くなった)自身が結核に苦しめられておりそれと必死にインクを取ろうとする蠅が重なっている、であったり、ショックを受けているボスと蠅の苦難とを重ねあわせているという意見であったり。

 人間とそれに対して小さな蠅を出しているのは何らかの意図はあるのだろう。自分はうまく答えが見つからず、単にひどいと思った。しかしひどいといっても、そんなに単純なことではなくそこから生命の必死さなどを伝えようとしているのでは、そのこと自体はひどくはないのではとも思い、結局のところわからなかった。読者にどうなったのか委ねる作品だと思う。

 

 

 

 

 

「園遊会」('The garden-party')

 園遊会と事故が起こる作品である。

 主人公はローラ(Laura)で、天気もよく、園遊会に適した日であった。ローラや兄弟、母親、職工たちと園遊会の準備などを進めている。しかし、近くで事故が起きた。荷馬者屋の乗っていた馬がトラクターを見てしりごみして、その間に荷物車屋は投げとばされ頭を打ち、死んでしまった。ローラはそれを聞き園遊会を中止にすることを家族などに提案したが楽団が来ていて、それを止めるわけにはいかない、この庭でその事件が起きたわけではないなどといった理由で受け入れてもらえない。園遊会は行われ、終わるのだが…

 

 園遊会の準備に当たって、職工が大テントを組み立てるなどをするのをどこにしようか迷っている。そのときに職工がカラカ(karaka、ニュージーランドの月桂樹)の木の所にすればいいのではと提案するのだが、ローラはカラカの木を気に入っており大テントによってカラカの木が隠れてしまうのではないかと心配している。そのあとの一人の職工の取った行動をローラが見て、よかった、と思うのだが、そこのシーンがいいと思った。以下である。

'They must. Already the men had shouldered their staves and were making for the place. Only the tall fellow was left. He bent down, pinched a sprig of lavender, put his thumb and forefinger to his nose and snuffed up the smell. When Laura saw that gesture she forgot all about the Karakas in her wonder at him caring for things like that-caring for the smell of lavender. How many men that she knew would have done such a thing. Oh, how extraordinarily nice workmen were, she thought. ' (p.239)

「[前の文を受けて]そう(大テントでカラカが隠れてしまう)にちがいない。すでに職工はたる板を運び、大テントの準備をしていた。ひとりの背の高い男のみがその場所を離れた。彼は屈みラベンダーの枝を親指と人差し指でつまみ、鼻の方へもってきて匂いをかいだ。ローラがその気を遣う様子を見た時、大テントでカラカが隠れてしまうのではないかという心配を忘れた。彼女の知っている人のどのくらいがそのような気遣いをしただろうか。ああ、なんてすばらしい職工だったのだろうか、と彼女は思った。」

 

 先ほども書いたが、この文の前でローラが大テントを建てるとカラカが隠れてしまうのではないか、という心配の後で、ここでは背の高い職工がラベンダーの花のかおりを気にかけるくらい繊細であるということを言っている。ではここには大テントを建てなかったのか、どこに大テントを建てたのか、ということは読み取れなかった。

 

調べた語句の一部(weblioや電子辞書などより)

「一杯の紅茶」('A Cup of Tea')

lilac ライラック、モクセイ科

stumpy ずんぐりした

cherub(神に仕えて玉座を支えたり、守護神となったりする天上の存在)

languid ものうげな、弱弱しい

vile 下劣な、堕落した

 

「蠅」('The fly')

helm 指導的(支配的)地位

treacle あまったるいもの

squat ずんぐりした(しゃがむ)

sacrilege 神聖を汚すこと tamper 下手に手を加える ex. 'It's sacrilege to tamper with stuff like this.'(p.354)

chubby-hole こじんまりして気持ちのいい部屋

scythe 大鎌

grinding ひく(研ぐ、研ぐ)こと

 

「園遊会」('The garden-party')

marquee (劇場・ホテルなどの)入口のひさし、(サーカス・園遊会などの)大テント;観客動員力

cream-puff シュークリーム

chesterfield ソファー

cobbler 靴屋

sordid むさくるしい、きたない

cooee 「おーい」

fray けんか騒ぎ

daisy ヒナギク

stave たる板、桶板、段

squiz ちらっと見る squeeze しぼる、おしつぶす、はさむ

cluck コッコッと呼ぶ声

chock くさび

 

 

 

その他

 前まで原書と訳本を対照させながら読んでいたのだが、最近はできたら訳本を見たくないと思って、わからない文が出てきたら文法書で調べたり、成句や語句をネットや電子辞書で調べたりしている。また、全体的な話の筋が書いてあるサイトがあれば最後に見るなどしている。それでもわからないところはあるので、そういうところはなるべく全体を読んだ後に、訳本があれば見たい。また、わからなかったところで興味を持った文や文法があれば、紹介したい。英語は得意とはいえないので訳なども間違えなどがあれば指摘していただけると有難い。

 今回のマンスフィールドの作品は、ウィキや内容・感想を書いた記事以外にも大学の教員が論文を書いているものもpdfでいくつかあり、そういうものは専門的であり、そうなのかとおもうことが多くあった。論文は自分が未読の作者、作品について書かれたものであるとほとんどわからないことが多いのだが、実際に読んだことがある作者や作品だと読めていけていいと思った。

 

読んだもの

Katherine Mansfield, Selected stories, Newyork: Oxford University Press, 1987に収録されている三つの短編

 

参考

Sherwood Anderson, Winesburg, Ohio, New York: Penguin Books, 1992 

ルーマー・ゴッデンの「黒水仙」(Black Narcissus)について

 中心となる舞台はインドのヒマラヤのそばの尼寺であり、そこは学校や病院をつくるためシスター(修道女)が必要だった。修道院の長から選ばれ、馬で尼寺へ向かう。シスターはひとりではなく、複数いる。ークローダ(Sister Clodagh)、ブリオニー(Sister Briony)、ハニー(Sister Honey)、フィリッパ(Sister Philippa)、ルース(Sister Ruth)。

 ほかの登場人物は迷惑をかける、若くてかわいらしい17歳のカンチ(Kanchi)や将軍の跡継ぎなど。

 その尼寺でシスターを将校の代理人ディーン(Mr Dean)が迎える。学校や薬局の建物などは着々と造っていく。そしてクリスマス、春の訪れ、イースター、受難節など、それぞれの季節に応じて出来事が起こる。

 様々な問題も起こる。それはカンチがものを盗んだり、ルースとディーンの恋愛の問題であったり、死にそうな子供連れの母親が来て、ハニーがその子供のために薬をあげたのだが結果死んでしまったり。だんだんと、修道士たちは村人から疎まれ、子供は学校に来なくなり、状況は悪くなっていき、修道士たちは追い込まれていく。

 

 

 

 とくに診療についてのことはよく出てきたため頭に残った。クリニックは建てるべきか、助けようのない患者へどう対応すればいいのか、など。先ほども書いたがハニーが、診療所に訪れた子のために薬をあげた結果死んでしまう。以下の文は残酷さを感じた。代理人のディーンがこういうことが前にあったと言っている場面で、決して故意ではなく、事故であっても、それは深刻なことであるということをあらわしている。引用する。(訳はkankeijowbone)

'The Agent here before my day was riding his pony down to the factory one day and he let it kick an umbrella that was open on the path, over the edge. There was a baby asleep under it and it was killed. It was an accident but they murdered him that night.’ (p.177)

「ここの私の前の代理人はある日、工場まで小馬に乗っており、道に開いた傘を見かけたため正気を失って蹴った。赤ん坊が傘の下で眠っており死んだ。それは事故であったが村人はその夜、前の代理人を殺した。」

 

 題名の「黒水仙」(Black Narcissus)は20章で将校の跡継ぎが軍や海軍の店で購入し、つけている香水の名前である。その匂いは強烈でシスターにめまいをおこさせるほどのものだった。ウィキを見るとキャロン(caron)というブランドの水仙の香水を指すようだ。込められた意味はあったのか、どういう意味でこのタイトルにしたかは気になった。

 

 鐘の音が、夕を告げる、朝を告げる、重要な人が来たときに鳴らすなど書いてあった。鐘の音の種類は時間帯などによって違うのだろうか。鐘の音は自分は教会を通ったとき、きいたことがあるのだが、音が大きくて一帯に響き渡り荘厳な感じがした。また聞いてみたい気もする。

 

 

 1947年に公開された映画もある。


BLACK NARCISSUS - Trailer - (1947) - HQ

 

 

語句

reverend 尊敬すべき

stick to one's guns 自分の立場を固守する

hopscotch 石蹴り遊び、けんけんぱ

ringworm 白癬(皮膚感染症のひとつ)

pantheism 汎神論

anklet 足首の飾り

boisterous 大荒れの、荒れ狂う

invulnerable 不死身の

plait 編み下げ、おさげ

deodar ヒマラヤスギ

peon (中南米で)労働者

 

 

読んだもの

Rumer Godden, Black Narcissus, London/Basingstoke: Pan Books, 1994

スティーヴンソンの「セヴェンヌでのロバとの旅」('Travels with a donkey in the Cévennes')について

 スティーヴンソン(1850-1894)がセヴェンヌ(山地、フランスの南の方にある)という場所で12日間、ロバとハイキングをする様子が書かれている。100ページほど。

 

 スティーヴンソンと一緒に旅をするロバの名前はモディスティン(Modestine)といって、頑固で、自分のペースで進み、早く駆けることもあれば全然進まないこともある。

 荷物にはいろいろと工夫が見られた。例えば最初の荷物はテントだと目立ち広げるのが面倒なため、寝袋を選んだ、など。

 セヴェンヌという場所の一部分は1702~5年ごろ、カミザール(Camisards)の乱がおこった場所で、スティーヴンソンがそれを想起してしまい、怖くて、怯えながらキャンプをしている様子も書いてあった。物語の中盤から最後にかけては、カミザールも宗教的なことであるが、ほかにもカトリック、トラピスト会など宗教的なことが多くでてきた。トラピスト会の「雪の聖母」('Our Lady of the Snows')という修道院に立ち寄る様子も出てきた。途中、会った人に、スティーヴンソンが宗教を変えるよう、言われることもあった(断ったが)。

 宿がある場合もあれば、宿がなくて、キャンプをする場合もある。キャンプをして、空を見あげることや自然の描写などがいいとおもった。例をひとつあげる。スティーヴンソンが寝るとき、目を閉じた後のシーンである。(訳はkankeijowbone)

‘The wind among the trees was my lullaby. Sometimes it sounded for minutes together with a steady even rush, not rising nor abating; and again it would swell and burst like a great crashing breaker, and the trees would patter me all over with big drops from the rain of the afternoon.’ (p.147)

「木の間に吹く風は私の子守唄となった。時々それは数分間、強まったり弱まったりすることはなく、安定して、吹き付けて聞こえる音を伴うことさえあった。風はふたたび強くなり、とてつもない砕波のようにはじけ、木は午後の雨からの大きな滴とともに私に向かって一面にパタパタと音を立てていた。」

 

 

 

 この本でスティーヴンソンの辿ったルートはgr70と名付けられて、そこをハイキングしている様子のある動画もあって楽しそうだと思った。

 スタインベックもこの作品に影響を受けており、似たような題名の本の、チャーリーというプードルと旅をする「チャーリーとの旅 -アメリカを求めて」(Travels with Charley: In Search of America)という作品もある。これも読んでみたい。

 

 

 

語句

dragoon 竜騎兵

fodder 家畜の飼料、かいば

choir クワイア、聖歌隊

hedonist 快楽主義者

friar 托鉢修道士

castor ビーバー

bastinado 棍棒による殴打

tea-urn 茶壷

knoll 小山、塚

agglomeration 塊になること

treacherous 背信の、たよりにならない

cross-examine 詰問する

hearken 耳を傾ける

clamor 叫び

 

 

読んだもの

Robert Louis Stevenson, 'Travels with a donkey in the Cévennes'(Travels with a donkey in the Cévennes and other travel writingsに収録されている), Mineola: Dover Publications, 2019

サキの「スレド二・ヴァシュター」(Sredni Vashtar)について

 

 主人公はコンラディン(conradin)という10歳の少年で、医者からのこり五年も生きられないと宣言されている。コンラディンにはいとこであり保護者であるミス・デ・ロップ(Mrs. De Ropp)という人物がおり、コンラディンは彼女のことを嫌っている(だが、コンラディンはそれを隠している)。コンラディンは外にある小屋にフェレット(イタチ科の動物。スレド二・ヴァシュター(Sredni Vashtar)という。)とめんどりを飼っている。コンラディンはよく小屋に行き祈る。だが、ミス・デ・ロップはどんな天候でも小屋に行くことはコンラディンのためによくないと思い、やめさせようとし、最初にめんどりを売りさばく。つぎにミス・デ・ロップはコンラディンの部屋から小屋の鍵を取り、小屋に向かいフェレット(スレド二・ヴァシュター)に何かしようとする。コンラディンはスレド二ヴァシュターにミス・デ・ロップに死が訪れてくれるよう祈る。...

 

 

 全体的に不気味な印象であった。動画もあったので見た。スレド二・ヴァシュターとは何を意味するのか気になった。

 

 

語句

antagonism 対立

haven 安息地

lithe しなやかな

strewn ばらまかれた、'strew'(ばらまく)の過去分詞形

boon たまもの

shuffle ひきずって歩く、もぞもぞさせる

on the ground that... ...なので

Rimmon リムモン、シリアのカルト像、聖書に登場する

 

読んだもの

H.H.Munro(Saki), 'Sredni Vashtar'(The Complete Sakiより), London: Penguin Books, 1982